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再開発に反対するニシオギDRUNKerです。各地レポも。

石神井庁舎はどうなるの?

練馬区、石神井公園景観条例を棄てるのか? - ニシオギDRUNKerシンブン

右の建物が、上記事に書いた「再開発ビルに移転」の富士街道沿いの練馬区石神井庁舎、です。

移転して、この跡地を練馬区はどうするのでしょうか?

手前のガードレールをごらんください。

写真が切れていてすみませんが、左側の現在位置のところが石神井庁舎。

そう、道路拡幅です。事業認可は半分ずつになるようですが、富士街道から通じる先は、現在の商店街、再開発ビルのために拡幅延伸する補助232号線です。

練馬区は北口駅前にもバンバン車を入れたいようですね。

庁舎の向かい側がこちら。なんか気になりますね!屋台をくっつけた飲み屋さんみたいです。

この通り自体は、現状こんな感じです。杉並区民としては、カニやメロンを送って公民権停止の人のポスターがたくさん貼られていると、練馬区に来たな、と感じますね(失礼な)。

商店街振興会は再開発待望なので、すぐにでも立ち退くのでしょう。

そして、道路を拡げることは、高さ規制の緩和とイコールと考えて間違いありません。

 

練馬区の道路といえば、外環道の真上に作る「外環ノ2」が事業認可されています。これは富士街道から北側。石神井公園三宝寺池(松の風文化公園)のところです。

 

両者は、かなり近く、完成すると石神井公園の街には相当量の流入交通が予想されます。

たしかに、練馬区のこのあたりは道路が狭く、バスは渋滞するし歩道はないし、といったところも多いです(ニシオギから大泉学園に行くバス、怖いですよね)。しかし道路を作ると、ますます車は増えます。高さ規制の緩和もあります。石神井公園の景観と、住宅地の静穏は、どうなるのでしょうか。

「対話の区政」について岸本区長に手紙。

2024.7.13岸本聡子区長が荻窪駅前でひさしぶりに(投票率アップひとり街宣とか、選挙応援ではなく単独の)街宣をおこなう、というので、「対話の区政」の問題点について「直訴」をすることにしました。
 
雨の翌日で、気温も少し下がっていて、お日和よろしく。スタッフ10人くらいが精力的に新チラシを配っていて(軍艦島のTシャツを着ている人がいて、ちょっとどうなのか、と思った)、通行人も受け取りもよい。「対話でつくるみんなの杉並」というノボリもひるがえっている。まさにそれを批判しに殴りこ…いや、「直訴(江戸時代なら打ち首)」に来たので、緊張しますね。
継続的に聞いている人10人くらい、最終的に50人くらいか。通行人も区長に好感度高めの感じで、あとふつうに路上で演説していることにびっくりする(それで親しみを持つ)ような反応も。でも、前はもっと街宣していたし、質問も受け付けて「対話」していたんだけどな。ジャーナリストの人もこの機会にと、けっこう厳しい質問したり、道路の当事者の人が訴えたりしていたんですけど。今日は30分だけなので、演説のみ。なんだか都知事選で露出を減らして当選した現職を思い出す…。
演説は、「女性初、2年目です」を連呼。今日は調子よく、堂々としています(堂々としていないときがあるのよ…)。
話のテーマは都市計画道路、子どもの居場所、パートナーシップ、環境会議、善福寺川、対話の区政。
いきなり(私には)本命の都市計画道路だ、何を語るのかな、と思ったら「デザイン会議やりました」だけで、具体的な話はせず。ありゃ。しかし、この「デザイン会議」を「対話の区政」として道路事業でやろうとしているのが、問題だと思ったからこそ、カチこ…いや、「直訴」に及んだわけです。
 

(沿道)デザイン会議、がひどかった話。 - ニシオギDRUNKerシンブン

 

あと、阿佐ヶ谷の方にも関わっている私としては、同じような「あさがやまちづくりセッション」も、出た人から問題があった、と知らされて懸念しています。こちらの記事では「ワークショップ」とはなにか、ということを専門家が解説しているので、それでさらに問題点についてはっきりとわかりました。

 

あさがやまちづくりセッションの問題点 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

 

そこでしたためた直訴状がこちら。

「デザイン会議」に出したアンケートみたいに罵詈雑言ではなく、きちんと書きました。明朝体でプリントアウトしたし、封筒に猪熊弦一郎のネコちゃんシールも貼ったし。ほんと、区長、読んで(打ち首なしで)。

 

杉並区長 岸本聡子様

 

本日は区長が掲げている「対話の区政」について問題を指摘いたしたく、お手紙を書きました。

先日の「(仮称)デザイン会議」に不本意ながら参加し、行政が事業計画について、ワークショップを使うという手法そのものに問題がある、と考えました。私は参加していませんが、「あさがやまちづくりセッション」でも同様の問題があったと聞きます。

 

気候会議やソシアルサトコズの集会、あるいは区職員の研修としてワークショップをするのは、よいと思います。気候変動を止める、行政で働く、などの同じ目的に向かう人の集まりであれば、互いに交流と意見を深めるには有効でしょう。私もアート系のワークショップに参加したこともありますが「作品を作る」という共通目的があれば、ワークショップは成立します。

それでは「(仮称)デザイン会議」の目的はなんなのでしょうか?補助132,133,221号線を拡幅延伸することです。しかし区の募集に応じて実際に参加したのは、拡幅延伸によって立ち退きや減歩される当事者で窮状を訴えたい思いで来た方々が多数、それ以外にも現在の街を愛し、守りたいという意見の人も多かったです。

そのような「反対意見」の参加者を集め「道路を作るため」のワークショップに参加させるのは矛盾でしかありません。反対している・立ち退きさせられる人たちが、「道路拡幅延伸による沿道のまちづくり」をやりたい人たちと同じ目的に向かうことができるでしょうか。その場で目指される「合意」の選択肢には、拡幅延伸しかありません。なぜなら会議の背景には行政側の事業計画があり、そこには反対意見の方向への「合意」の可能性はありません。

こんなことならいっそ「杉並区は道路を拡幅延伸するので」それに賛成の人限定で対話する、当事者不在の「沿道デザイン会議」であると明言して募集した方が正直です。

「あさがやまちづくりセッション」では「杉一小改築」をテーマにしていましたが、移転に賛成する人(学校関係者以外も)たちだけで新しい学校を考える場として設定されたのでしょうか?

 

さらに「(仮称)デザイン会議」で使われた、途中で席替えするなどの「ワールドカフェ」形式も、ふさわしくないものでした。席替えは異なる属性の参加者同士の交流目的ですが、道路拡幅延伸に反対、どころか、それで被害を受ける当事者が、道路を拡げてまちづくりをしたい人たちと仲良くなって事業を進めることができますか?

また、席替えなどによって進行をやたらと急かすのも、まったく熟議には繋がらず、それどころか高齢者や障害のある方が多くいる場でまったくバリアフリーではなかった。そして、会議の進行をむりやり区の意図のとおりに急かして進めるのは、それが道路事業を乱暴に推し進めることとシンクロナイズして感じられました。

 

岸本区長は「対話の区政」を構想する上で、「区民同士が議論する」ための手法として、ワークショップを使われているのでしょうが、なんでもかんでも同じ方法論は通用しません。何度も言いますが、同じ目的に進む人たちのブラッシュアップならよいのです。が、賛否が分かれている、同じ目的に進む意識が確認されていないのに、ワークショップはありえず、それは単なる反対者の包摂・懐柔策になってしまいます。

また、道路事業にしても杉一小移転にしても、ワークショップという方法論自体についても、区民や行政側参加者の間での知識・情報に格差があり、そこでいきなり「区民同士の議論(担当でない行政職員をファシリテーターにしたのも論外)」は無意味です。このケースでまず必要なのは、行政と区民(当事者)のきちんとした「対話」ではないでしょうか。

対話の前提となる情報には、行政の計画だけでなく、当事者の意見や立場(反対含め)を知ることが必須ですが、「楽しいワークショップ」をやりたい非当事者区民からは、反対意見があるのは迷惑、とまでみられています(当事者の方へのブーイングすらありました)。

しかし、広く区民が参画する議論(「(仮称)デザイン会議」にしても「あさがやまちづくりセッション」にしても、今後の「下井草まちづくりラボ」にしても)の大前提として、まずは(困っている)当事者の意見を参加者・行政が徹底的に聞いて知ることが必要ではないでしょうか。抽選で当たった人が短時間のコメント、などではなく、当事者の(反対)意見をすべて述べる場を設け、会議に参加する人すべてが(嫌でも)それを知るべきです。もちろん、区長を筆頭とする行政職員も全員が。当事者の方たちは、行政、特に岸本区長に話を聞いてもらいたいはずです。

 

それなのに「(仮称)デザイン会議」「あさがやまちづくりセッション」のどちらにも、第1回、「はじまりの会」であるにもかかわらず、区長ご自身が参加されなかったことには驚きました。当事者の方は区長に意見を伝えるチャンスと信じていたし、非当事者では「区長と一緒に話し合う」ことを楽しみにしていた方もいました。何よりも「対話の区政」の旗振り役であり、道路や杉一小事業の責任者である岸本区長の不在によって、誰に何を言っているのかわからない、無責任なワークショップがルーティン的に進められて、終わってしまいました。

区長には今後、きちんと現場を見た上で、「対話」の前提である当事者の意見を反映・共有する方向に切り替えていただきたいと思います。「対話の場を設ける」ことはできている、内容ややり方を修正し、質を高め、実のあるものにするチャンスは今ならまだあります。手遅れになる前に。

 

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演説全体についてのメモ(とツッコミ)。
・対話の区政を推し進めてきた、なんのための対話なのか(こっちが言いたいわ!)、杉並区の民主主義を一歩一歩、対話の区政進んでいる。
都市計画道路とまちづくり:
デザイン会議が発足(二週間前と言い間違い。出てないから間違えたのでは…)。都市計画道路からまちづくりをみんなで考えていく。
ひとしきり挨拶(岸本聡子です、女性初の~2年間やってきました~)が入ったのち「都市計画道路のお話しをしました(えっ!これだけ?)」
・続けて子どもの居場所
施設マネジメント計画、区民みんなの財産コモンズを守りながらみんなで運営していく。上荻、高井戸、西宮でワークショップ。子どもの権利条例の準備が着々と進んでいる。16人以上のお子さんのご意見を聞いた。子どもの視点から条例だけでなくまちづくりを考えてみよう。
・次のテーマ行きます(なんか元気な言い方だった)、性の多様性
パートナーシップ、全国85%の人口をカバー、杉並区35組、事実婚を含めたい。
・チラシの説明
気候区民会議:もうすぐまとめ。すこぶる面白い。
会議で出ているアイディア:杉並電力 10分で森林浴 自転車に乗る時間をひとりあたり10分から15分に 日焼けどめを塗らずに自転車に乗れる 樹木
・みなさんの中にもなにかしら参加してくれた人がいるかも。無作為抽出のハガキが届くかもしれません。こんな問題考えたことなかった、という人にも参加してもらい、多様な意見を。
地域の主権、杉並区の民主主義を一歩一歩進める。
善福寺川緑地 水害が発生、心配ごと。治水対策インフラ整備やってきた
流域治水:インフラ整備と並行してグリーンインフラを進める。
・区報でお知らせした「大雨の時にお風呂の水を流さない、洗濯しない」みんなで取り組む治水対策(自助努力…)
善福寺川をひとつのモデルとして。
・公共施設に木を植えたり土に戻す。
・島谷先生の専門家チームと協定、グリーンインフラの数値をみんなで計算、雨庭を作ったり。
・みんなで作る対話の区政
私に投票しなかった多くの人の意見を聞く。職員と一緒に対話集会に参加してきた。2年目、折り返しとなりますが、その先も見てる。
・選挙の争点だった都市計画道路とまちづくり(を、どうする、と言わない)、パートナーシップに事実婚、子どもの権利条例、子ども食堂を支えるのが行政の役割。子どもから見るまちづくりを進める。
・チラシの紹介
都市計画道路や都市開発は簡単に変えられない。ゼロに戻すことはできない。やり方を変えていく。
・私に投票しなかった人の声も含めてみんなの声を聞いていく。
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感想。
最後の無作為抽出と「私に投票しなかった人」の話、「対話の区政」についてのまとめになると思うんだけど、まず当事者の話を聞いて!というのが、私の直訴状のまとめなので、あー、やっぱりズレがあるなぁ、と。投票しなかった人の声を聞く、というのも、一般論ではたいせつな(当たり前の)ことなんだけど、じゃあ投票しなかった人というのは再開発がしたいから、とか、環境とか保全しなくていいと思っているから、ジェンダー平等とか大嫌いだから、岸本聡子には投票しなかった、という人もいるわけじゃないですか。前区政のやり方に問題があります、と言って、そこに投票した人がいて、今の区政があるわけでしょう。そこで、前区政の事業を進めたほうが利益があるからどんどん推進してくれ、という人の話を当事者の声と同等に扱ってしまったら、結局批判のあった事業も継続するってことになりませんか。
そこで「やり方」を変えて「対話の区政」にします、と言われても、「対話拒否で道路を拡げる」か「対話して道路を拡げる」か、なら、当事者の被害は変わらないのでは。
 
ほか、気になったことは、子どもとか環境の課題の中でも「子ども目線のまちづくり」と、まちづくりのことが出てきたり、浸水対策としての「公共施設の緑化」も施設再編(統廃合)や杉一小移転改築などで「緑化するため」という理由を持ち出されないか。警戒が必要だなと思いました。まさか杉一小移転予定地の現・河北病院の浸水問題の対策が、校庭を緑化して治水するグリーンインフラ?
その治水の課題、善福寺川の話では、今問題である「グレーのインフラ」である大土木工事である善福寺川上流調節池の「ち」もなし。樹木伐採、公園潰して、シールドマシンで地下40mに大トンネルつくる、これは東京都の事業で、杉並区はそれに(自助努力の)グリーンインフラを付け足します、というように思えます。
なんだか疑念と不信ばかりで、まったく不幸せでイヤらしい聴衆ですが、でも、まとめの「変えられない」は間違いなく「変えない」宣言ですね。私は「2年間なにもしてない」と受け取りましたが、いろいろな課題について情報のない通りがかりの聴衆の人たちはどう聞いたのかな?
 

羽村(後編):羽村駅西口区画整理の22年

羽村多摩川沿いの伝統的な街並みを全部碁盤目に変える、乱暴すぎる道路事業の話、後編です。

羽村(前編):玉川兄弟と中里介山の地で。 - ニシオギDRUNKerシンブン

ざっくりいうと、これ(享保年間の古地図:羽村市郷土博物館)から

こうなった(駅前の案内図を天地逆にしてみた。下側が西口。上の街並みと比較してみてほしい)街を

こうする。羽村大橋に向けての40m道路(そんなに交通量ないのに…)まで作り、区域の3割を道路にする計画 !

羽村駅西口土地区画整理事業 | 羽村市公式サイト


 そりゃあムチャだろう、ということで、この件は2002年から行政訴訟裁判になっています。なんと22年目の闘いです。

 

2024.5.15東京地裁での羽村区画整理行政訴訟裁判(第22回口頭弁論)に行ってきました。

裁判とはいえ、両方の弁護士の間での書面で弁論は進んでいて、裁判所ではその確認だけで5分もせずに終わりました。「異議あり!」みたいのはないのね(書面内容には異議があるのだろうけど)。

ちょっとおもしろかったのは、住民側の弁護士(阿佐ヶ谷で講演会に呼んだ山本志都弁護士たち3名)はカジュアルで男性もノーネクタイ、髭、だったりするのに、行政側3名はスーツびっちり(環境破壊、樹木伐採する側の人って、たいていSDGsバッヂをつけてるよね)、であったこの対照。

 

しかし裁判自体を見てもそのくらいのことしかわからないので、原告団の事後報告会に参加させていただきました。

それでも難しい裁判なので、どこまで書けるか。詳細は原告団のHPを見てください。この記事も原告の方から多くのアドバイスをいただいています。

羽村駅西口区画整理反対の会ホームページ - hamuraのJimdoページ

 

まず、何がややこしいか、というと、この羽村駅西口区画整理事業」が、裁判所の差し戻しや、途中で行政側の変更を経て長期間に渡っており、裁判の枠組みとしては、現在は5回目になる。

 

① 2002(H14)11/13東京地裁区画整理に関する公金支出差止請求」(原告129名)

→2003(H15)12/4東京地裁「具体的支出の特定がない」却下→2003(H15)12/18 東京高裁に控訴(85名)

→2004(H16)7/20 東京高裁・棄却

→2004(H16)8/2 最高裁に上告(83名)

→2006(H18)4/4第3小法廷に口頭弁論→2006(H18)4/25 事業計画決定前の監査請求は適法・地裁に差し戻し

 

②2006(H18)10/13 東京地裁「駅前14棟移転補償の差し止め」(235名) ①に参加訴訟となり、原告242名となる。 →2008(H20)10/14地裁「訴えの利益が消滅」差し戻し審却下

→2006(H18) 10/27 東京高裁に控訴(220名)→2009(H21) 11/25 東京高裁・差し戻し審の控訴を却下

→2009(H21) 12/8差し戻し審・最高裁に上告(212名)

→2010(H22) 最高裁 2002(H14)の「公金差し止め請求」差し戻し審を却下

【2002(H14)の提訴から2010(H22)の結審、判決まで9年】

 

③2006(H18)2/17 東京地裁「土地権利者の会補助金差し止め返還裁判」(原告9名) →2007(H19)10/19地裁「補助金は違法とは言えず」棄却

→2007(H19)10/31 東京高裁に控訴→2009(H21)1/14 東京高裁・却下

→2009(H21)1/27 最高裁へ上告→2010(H22)6/22 最高裁 上告受理せず 

【2006年の提訴から2010年の最高裁まで4年】

 

④2015(H27)6/8 東京地裁「第2回事業計画変更取り消し提訴」(原告121名)

→ 2019(H31)2/22「事業計画は違法・取り消し」判決(住民側勝訴)

(詳細はこちら)

2024.04.13山本 志都弁護士講演会「行政訴訟・土地区画整理裁判を考える」 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

→2019(H31)3/6  羽村市、判決不服として東京高裁へ控訴。5/20事業計画を変更。

 →2022(R4)8/8 高裁は、住民側の勝訴を覆す判決。11/4 権利者45名で、最高裁へ上告。

→2023年(R5)3/最高裁「棄却」の判決

【2015(H27)年の提訴から2023(R5)年の最高裁判決まで8年】

 

⑤2019(H31)11/13 東京地裁へ「第3回事業計画変更(期間15年間延長)取り消し」求め提訴(63名):現在の裁判

→次回7/10第23回口頭弁論(地裁)

 

とにかく、事業の不当性(予算や工期なども)を住民が訴え、行政がのらくら反論しながら、事業を止めようとしない22年間です。

 

今回のやり取り(書面で)は

24/3/13裁判所→行政側へ:集団移転が進んでおらず、住民の反対があり、工期に影響がある。

24/4/26市の回答:区画整理法77条で直接施工(強制執行※)できる。集団移転の範囲は柔軟に設定。事業期間の変更はありうる。

と、回答したというもの。

 

※今年の東京都のニュースですが

・都建設局用地部に、知事のトップダウンで「機動取得推進課」を60人余規模で設置。予算440億円(1月26日)

・都建設局は、「土地収用制度適用基準」の運用を改定したことを認めた。「任意折衝による円満解決を原則とする」との文言を削除し、事業開始5年の期限を過ぎるなど条件を満たした際、都が「事業の早期完成のため緊急を要する場合や事業効果の早期発現に支障がある」と判断すれば「土地収用法に定める手続きを進める」とした(6月4日)。

官製地上げ…

 

住民側は、一環して事業計画自体の実現不可能性を追及しているため、市の財政圧迫するほどの予算と工期の設定がおかしい、と主張しています。

 

2019年の画期的な住民側の勝訴判決は「市の財政と事業期間に問題がある」ことを認めたものですが、そのあと市は第3回事業計画変更を行い、なんと判決の出た内容を無効にしてしまった(事実がなくなった)。そんな荒技あり?と思いましたが…

さらに、都と国から100億円補助・交付増額で市の財政負担という論拠も弱められてしまった。とはいえ、小さな市にとっては膨大な予算を使う計画であり、当然、工期も延びるのは当たり前。

 

総事業費436億円、うち、市の負担が220億円(120億円は市債)。工事費のほとんどは補償と用地取得。市は区画整理=換地で進めたいが、5億4000万円の予算がすでに50億円に。

 

工期に関しても、2019年第3回変更の予定工期はあと6年。450棟のうち191棟の移転を予定しているが、達成率はまだ37%(換地設計は2013(H25)年)。

 

住民側の方針として話されていた対案は、すでに用地取得されたところには道路を作り、これ以上地域の破壊を防ぐこと。

(牛坂通りから羽村大橋にくだるところ。奥にみえるオレンジのネットは用地取得された場所。ここだけの拡幅は可能だが、区画整理が済んでいないからと手をつけない)

 

(公園に見えるが、道路用地。こうした「空き地」が増えていく)

 

これらは裁判だけではなく(裁判での主張も含めて)市に要求していこうというところ。

・全戸移転(街区)しないで沿道整備事業に移行させる。

羽村大橋から新奥多摩街道までは用地取得できている(18m都道)。

区画整理を縮小した飯能の事例を手がけたコンサル等に替えて市長に調査依頼をさせる。

 

そもそも、現・橋本市長は事業の検証を公約して、2021年に当選(来年4月改選)。

しかし現在は、対象地域を縮小したり、区画整理以外の方法も検討しようという意志はあるが、事業計画の換地変更(市長権限で変更はできるはず)が必要なので従前の計画で進めてしまっている状態。

 

これ、杉並区とそっくりですね。

「反対の多い事業(杉並区の場合は道路だけでなく複数)は見直す」として区長になった岸本聡子区長が、「すでに事業認可されている」「一部着工している」など「決まったことは変えられない」という意識になってしまって、本来は首長権限で変えられる、止められることも変更しようとしない。

 

羽村の場合は、進めたいのは「公益財団法人・東京都都市づくり公社(元・東京都副知事が理事長。東京都の天下り三井不動産だけではない! )。市職員はその言い分をそのままに「変更はできない、難しい」を繰り返し、「ここまで進んでいるので、細かい換地なので後戻りできない」と言い張っているそうです(だから換地にしなければいいのに…)。

 

住民側からは、都からの交付金がすでに出ていることについても、「道路ができないと返還しなくてはいけないのか?」ではなく、現在用地取得されたところに道路を作って、実績とすることができるのではないか、との対案。

これ、かなり現実的な話に思えるのだけど、それを聞かずにどうして街を壊してまで全部の道路をやろうとするのだろう。

杉並区の補助132号線などのケースでも、用地取得での沿道整備事業をするだけでも、地権者住民を追い出すことになって、当然反対されるわけです。

 

さらに、羽村のこのケースは「換地」による「玉突き移転」となる「土地区画整理事業」のやり方を、道路事業のために導入しているのがおかしい。おかしい、というか、それで余計に事業が進みにくくしているように思えるのだけど。

杉並区でいえば、阿佐ヶ谷のケースで、換地という手法を取ることで、むしろ土地の価値評価が不透明になってしまったり、河北病院の工事が遅れていることで、全体の予算が膨れ上がること、など、似たところがあるのではないでしょうか。

 

ましてや、1000軒もの住宅地であるから、住民それぞれの権利侵害問題は深刻で、この日、問題点として説明していただいたことは「延々と玉突き※で、道路と関係のないところまで換地設計に入っている」「権利者の知らないうちに決められた」「個人情報とされて非開示。決定過程、減歩・清算金(横の照応)がわからない」ということ。不公平で不透明。

行政は再度の変更はあり得るというが、それだって「第3回からさらに変更すると住民の権利を不安定にする」ことになるばかり。

いいところに移る人と悪くなる人が生じ、保留地を取得して売る人が得をしたりして、地域の分断が起きてしまう。

 

※換地事業による玉突き移転 : 事業区域は既成市街地の住宅街の為、道路用地にAさんが住んでいる(換地先に移転)→立ち退きに対して別の土地を補填する(換地)→その土地にはBさん宅(道路用地ではない)がある→Bさんの換地先にはCさんが…となる。

さらに道路用地でない家は事業完了後に元の場所に戻るケースもあり、そのためには各家に仮住まいが必要となる。区画整理では、道路用地に該当するかどうかは関係なく、ほとんど全ての家屋、約1000軒が土地を減らされたりして(土地の小さい人はその分清算金を徴収される)碁盤の目の街区に詰め込まれるため移転する。

なんか、書いていて「嘘だろう?」と思えてきますが、ほんとにこんな無茶な計画。住み慣れた家を引っ越すって、大ごとですよ。事業をやるにしても、もっとも影響の少ない範囲にすべきでは(住民のためだけでなく、行政にしたってその方が事業が円滑に進むはず)?

 

行政としては、買い取りにしてしまうと、住民が違うところ(市外)に転出してしまうから人口減少につながる、とか、換地の方が経費が少ないとかの目論見のようですが…。そりゃ住まいを追い出して道路にするような市に住み続けたいか?という話だし、経費だって玉突き換地で時間もかかるため、仮住まいの賃料も累積して、補償金は1軒あたりが2800万円から4000万円に上がっているそうです。

 

そういう「事業の不当性」を訴える裁判なのですが、規模や事業内容は違っても、東京各地で、行政が明らかに住民の利益にならない事業を、疑問に思えるような予算投入で進めようとしている事例が数多くあり。

羽村市のケースでは、裁判で一度はよい判決が出たり、市長が替わったりしたのに、まだ止まらないので、きわめて困難な問題ではあります。けれど、どこかで止めないと、今後、どこでもきちんとした街づくりができなくなってしまう。

 

羽村も含め、これからも各地の事例に注目したいと思います。

羽村(前編):玉川兄弟と中里介山の地で。

 

〈阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会〉の企画で、今年の4月13日に羽村駅西口土地区画整理事業住民訴訟を担当している山本志都弁護士を呼んだ講演会がありました。

その裁判では一度は住民側が勝訴するという画期的なことがあり(しかし荒技でひっくり返された、という話を聞いてみんな仰天)、阿佐ヶ谷の土地区画整理、そして杉並区の道路事業に対抗するヒントが得られるお話でした。

 

2024.04.13山本 志都弁護士講演会「行政訴訟・土地区画整理裁判を考える」 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

 

さて、現場主義のニシドラでは、さっそくその後のゴールデンウィークに、羽村に行ってみました!

今回は前編:現地がどんなところか、観光案内も交えてお届けします。後編は裁判の話。硬軟とりまぜた前後編スペシャ羽村の話をお届けします。

羽村(後編):羽村駅西口区画整理の22年 - ニシオギDRUNKerシンブン

 

個人的な話からすると、羽村には以前遊びに行った(大菩薩峠が好きで中里介山の墓参りに行った)ときに、渋い川岸の街並みに、突然このような看板を見つけて、えっ?こんなとこに道路?とびっくり。それが他の地域の再開発や道路事業にも関心を持つきっかけになったのでした。

 

 

羽村といえば、玉川上水の起点となる多摩川羽村。江戸時代から、ゴールの江戸だけでなく、武蔵野の土地も潤していただき、我が善福寺川にも流量不足を補うために分水していただいた、杉並的にも縁の深い場所なのです。

 

 

そんな羽村(駅西口)で何が?

詳しい事業内容などは後編:裁判編で原告となっている住民の方たちの羽村駅西口区画整理反対の会」からご教示いただきました。

サイトはこちら。

羽村駅西口区画整理反対の会ホームページ - hamuraのJimdoページ

 

羽村駅西口、多摩川に向かって河岸段丘をくだる傾斜地の街並みを形成する、カーブした坂道や細い旧道が入り組んだこの地域。2003年に羽村市羽村大橋に通じる40m道路を含む、対象区域すべての道路を碁盤目に整備する事業を策定。エリアは市の面積5%にもあたる42haの住宅地。なんとその地域の30%が道路になる計画!緑ゆたかで閑静な住宅街で1000軒の移転が必要となる事業に当たって、市が取ったのが土地区画整理事業

これは単純に道路を作るところの家を立ち退きさせて買い取るのではなく、区域全体をパズルを組み替えるように土地の交換を行う方法。パズルったって、人が住んでいる家ですよ、そんな組み替えていいものではない。

 

土地区画整理事業は、杉並では阿佐ヶ谷問題で三つの大きな地権者とその他の住宅を整理するのに使われるなど、再開発でひとつひとつの区画をまとめて広い区画を作り出すときによく使われる(行政が絡むとは限らず、民間の施工もある)。そうやって広い区画を作ることで、用途を変更します。

しかし、今どき道路事業でこんなことをするのは異例では?大正時代の杉並区(当時の井荻村/町)で、内田秀五郎村長による井荻村土地区画整理(青梅街道北側の今川など)で、農地を碁盤目の道路と宅地にしたのが有名だけど…

 

現在の羽村は住宅地として完成していて、家はもちろんインフラも現行の宅地に沿って整備されている。換地による区画整理をしてしまうと、玉突き式に他人の土地に移転したり、最悪そこが空くまで仮住まいをして再度移転したりと、ちょっとあり得ないほど負担がかかる。

見たところ持ち家で長く住んでいる人も多そうな地域。住み慣れた家を出ていけ、といわれるだけでも大変なのに、移転先が別の人を立ち退かせた土地というのも、気持ち的にどうなのか。ご近所さんの家を壊して、そこに自分の家を建てるわけでしょう?

それに、当たり前だけど、土地の価値って細かく違うので、例えば面積が同じでも区画割りが違う、日当たり、駅からの距離、この地形なら斜面の状態も大きく異なる、など、条件が違うところと交換することになる…。ほんと、パズルゲームではないのです。

  (用地取得された場所。地域の約1割もの土地が先行取得された。こうして街並みが「歯抜け」になるのも問題)

 

で、実際行ってみた印象としては、単純にもったいないな、と。

この街並みはそれこそ玉川上水の時代から、少しずつ発展して開発されてきて、地形を活かして自然に作られてきた道路であり住宅地であると感じました。杉並の今川なんかの農地を分譲して一斉に作った区画、もっといえば郊外のなんとかケ丘みたいな不動産会社が作った新興住宅地とは、歴史の重みが違う

古いお屋敷などは一軒が広くて、大木のある庭がある。当然、昨今問題の樹木伐採も伴うわけです。

街並みの中には井戸もありました。多摩川につながる湧水が崖の中にあるのだろう。このエリアに100基もの井戸が現存しているのに、それがたった1基くらいしか残らないという。

伝統的家屋の損失もあるし、信仰などの文化もなくなる。こうした小さな神社(上:聖徳神社、下 : 水神社)がいくつかあったのだけど、これも地形に沿って祀られてるものだろうから、移転して新しくすると本来の意味が変わってしまう。多摩川沿いには水神社が(これは対象区域外)。

さらに古い時代の話では、三つの縄文遺跡があり、それが地域の3割にも及ぶそう。掘れば土器が出てくるような土地ってことですよ。それをきちんと文化財調査しながらやっていたら、いつまでたっても区画整理できないのでは?あるいは文化財調査をずさんにするのか?

 

西荻窪補助132号線はじめ、都市計画道路は、すべて今さら?という感じで、もう人や店が定着して完成してる街並みの道路を変えるのは無理筋だと思うんだけど、その中でもこれはとんでもない規模。その上、区画整理でやるのは問題が多すぎるでしょう。

 

ところで、中里介山。この区画内にあたる禅林寺菩提寺で、崖の上にある(これもすごい地形)墓地にお墓があるんですが、もう少し西側の玉川上水取水堰近くに生家跡もある。

今回、多摩川を渡ったところにある羽村市郷土博物館(立派!無料!)に行ってみたら、中里介山ルームがあって紹介ビデオを見てきました。作家としてだけでなく、社会運動に取り組んでいた人で、高尾山の方に学校(戦前に教育勅語によらない私塾:隣人学園)を作ったそうです。ところが!ロープウェイの建設で立ち退き!あきる野市の方で再開してみたら、今度は青梅鉄道建設で崖崩れ!かわいそう!

そして今回の区画整理では介山が作った「西隣村塾」跡のところが「中里介山公園として整備」って、要は潰して公園にして名前だけつけるということ?死んだ後まで立ち退き続きとは…

 

また、郷土博物館にあった古地図(享保年間)。これが今の街並みの原形じゃないですか。地形に沿って自然に作られてきた道路の形です。

これはもう、文化財として街並み保存した方がいいくらいの場所ですよ。歴史の積み重ねがきちんと残っていて、それが見える土地。

多摩川羽村堰という観光地としても、この道の方が断然歩いて楽しい

 

それを潰して、なぜつまらない碁盤目に?

駅前や、羽村大橋に通じる広い道路が必要、と言いますが、ぶっちゃけ、西口のみならず、流入交通があるということになってる東口も、車少ない…

なんと羽村市は40m道路は多摩都市モノレールの延伸のためだ、と言っている!延伸って…今の終点の立川市上北台から7-8kmある…途中に横田基地もある…。

そういえば、基地?歩いている間も、頻繁に戦闘機が低空で爆音を立てていて、東口の八高線の向こうには横田基地があることを意識させられましたが、まさか軍用道路?非常時の滑走路?と疑ってしまいます。

 

そう思ったのも、東口との対照を見てのこと。東口はかっちり碁盤目の道路の、露骨に新興住宅地。駅前にスーパー、街道沿いにチェーン店、団地、そして広い公園やクリーンセンターなどの公共施設。

だけど一番広いのは、日野自動車。その前の道路はその名も産業道路福生青梅線で、自動車工場のために整備された道路を基本とした街並みであることがわかります。

 

これは駅前にあった地図なのですが、西口(上)と東口(下)の対比がすごくわかりやすいでしょう?

 

それで、行政というものは東口のような街並みをよしとして、それに統一したがるもの。

これは杉並区(東京都のガイドラインに基づく)の道路整備の考え方。こちらの[都市計画塾]で学びました。

都市計画塾・始動!! 第一回は都市計画道路。第二回、第三回の告知も。 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

 

まさにこの行政の「理想の街並み」が羽村駅東口

でもこんなのは、先に計画があって、更地にイチから作りあげないと不可能な、人工的な街ですよね。

もちろん西口だって住宅地だから人工的ではあるんだけど、さまざまな時代の人たちがその都度、地形や地盤といった環境に適応してひとつひとつ作ってきたものの集積が、西口型の街ではないですか。それは人間の自然な感覚に近い。

 

最後に、せっかく羽村に来たので、羽村市立動物公園のご紹介。レッサーパンダ!!

全部碁盤目の東口で、実はここだけが道がくねっている。もちろん動物園を作るときにそう設計して造園したのだが、それは来園者の回遊性と同時に動物たちの生活環境を確保するためです。動物たちは本来の生態環境と違うところに連れてこられて、自然ではまったく共存することのない、たとえばペンギンとキリンが同じ園内に住むわけですよね。彼らは人間よりも嗅覚や聴覚が鋭敏だし、肉食と草食が隣り合わせに暮らすとストレスじゃないですか。

それを敷地内で少しでも隔離するために、くねくね園道にして、飼育舎の間に樹木を入れて、ということがなされているのだな、と感じました。

 

動物園にたとえるのは失礼かもしれませんが道の設計の考え方としては、くねくねした細い道は人間の場合でも、プライバシーの保護、静かな環境(広い道にして通過交通が増えるのも問題だし)を守るものであり、住民にとっては決してデメリットではないと思います。

 

せっかくの多摩川の貴重な自然と、玉川上水はじめ歴史的景観と文化を臨む土地なのです。

すべての再開発に言いたいことですが、一度壊したらもう作れないのです。



後編は、住民のみなさんの苦闘の22年(これからも)裁判、行政が何をしているか、のお話です。

羽村(後編):羽村駅西口区画整理の22年 - ニシオギDRUNKerシンブン

「道路整備」って「拡幅」だけではないはずだ。

前記事で、西荻窪補助132号線を含む区内3路線の「拡幅・(新設)延伸ありき」の「(仮称)デザイン会議(2024.6.2)」について、怒りの10000字を書き連ねましたが、よくない道路があれば「整備」するべきだということくらい、同意しているんですよそれが(立ち退きをともなう)「拡幅」一拓になっているから文句を言っているだけで。そしてたいして問題のない道路を「拡幅整備」することに膨大な予算をつけていると、問題のあるところに費用がまわらなくなってしまう。

 

私はほんとうのニシオギ交通問題は、北口のバス乗り場だとずっと主張しているし、そこは、各機会で発言して賛同も得られている。しかし意外と区の職員でも実情を知らない人もいて(ニシオギ在住の岸本区長はさすがに知っている)、なにを見て道路整備を考えているのだろう、とも。

 

「そういうことはデザイン会議で言え」かもしれませんが「対案」はあります。

トップ写真の「松岡ビル」ですが、現在耐震強度不足により、取り壊し間近です。

(2024.6.25撮影)。区の出張所も入っていた。地下はルノワール

 

これを「活用」することこそ、千載一遇のチャンス。ここで動かないと、10年スパンで駅前はこのまま、交通の不安な状態が続いてしまいます。

ニシオギは小さな街ですが、住民と来街者からの愛着が強く、歩行者がつくる「いい雰囲気」があります。が、このような車やバスの動線は個人や、街の事業者だけではどうしようもありません。

そこで、区役所(デザイン会議含め)、JR東日本、JR関東東日本都市開発、関東バスに、以下の提案書を送りました。

 

 

バスの動線だけでなく、駅前から商店街に屋根をかけるというのは、歩行者にとっては百利あって一害なし、みんなの望みだと思います。補助132号線(北銀座通り)は「どうせ拡幅するから」と、ずっとアーケードを直さないし、途中非協力的な建物の前は切れているしで通行人は傘を差したり畳んだりしながら歩いています。駅のアプローチも屋根が中途半端で、雨の朝はいつも混乱しています。

ウォーカブルな街、というなら、アーケードはマストだと思うのですが。それに、JRも関東バスも「歩行者」がお客様なわけでしょう。

 

関東バス(お客様窓口)からは6月4日づけで回答が来ました!!

 

「ご意見は当社運輸部の計画担当に伝えます」「杉並区では道路の拡幅と駅前広場の充実を目指し、計画しているようです」「当社としても、杉並区の整備計画に協力していきたいと思っています」

 

と、いう内容でした。

まぁ、行政が主導だからね、という予想通りの反応でしたが、回答をくれただけでも、関東バスは誠意があります。

JRとJR都市開発からは無回答です。

(沿道)デザイン会議、がひどかった話。

2024.6.2阿佐ヶ谷中学校体育館にて、杉並区が「(仮称)デザイン会議・はじまりの会」を開催しました。
 
岸本聡子区長は「対話を大切にしたまちづくり」と言っていて、こういう会が「杉並は対話が行われていてよい」と、考える方もいらっしゃるかもしれません。
が、最初に書いておきますが、区民と対話する、といっても、その対話の使い方は「事業推進の先をデザインする」なので、参加した住民、特に道路事業に家を取られることになるので反対している当事者の人たちにとっては、道路事業ありきの推進プロセスに巻き込まれる、罠みたいな恐ろしい代物です。このような「対話(ではない)」を改めなければ、前区政の事業に反対して岸本区長を支持した人たち、もちろん岸本区長自身も、どんどん事業を推進することになってしまいます。
 
道路事業に対する「対話」の会は、2022年の「さとことブレスト」からはじまりましたが(それなのに何故今回またはじまりの会なのか、とか)その時から「ワークショップ(風)」で区民と対話、という方法が取られています。しかしある事業に対して、それを推進する行政が反対する住民を含めてワークショップをすること自体おかしなことです。
 
ニシオギの「補助132号線」についての記事はこちら。
 
さとことブレストは地域(沿線ごと)でしたが、今回「はじまりの会」は三地域合同で、対象は全区民。「デザイン会議の進め方を考える」というよくわからない呼びかけで、なぜか200人近くもが参加。
これまでのさとことブレスト参加者にも通知を出しているので、補助132号線(西荻窪)補助221号線(高円寺:中野方面への道路拡幅)補助133号線(南阿佐ヶ谷・成田東:中杉通りの五日市街道まで新設延伸)の当事者の方も大勢いたようです。そういう人たちは区に対して反対の理由を言いたい、困っていると伝えたくて来ているわけで、「区民の声を聞きます」と言われたら、それで行政の側に影響を与えられると期待するのが当然でしょう。
そうでなくて、岸本区長の「対話」に参加して、まちづくりについて話し合いたい、と考えた人もいるでしょう。申し込み時のコメントを読むと区長と話したい、というのも散見されました。
 
しかし、区長はよもやの欠席
さとことブレストのまとめとして開催された23年のシンポジウム(これも道路事業ありきみたいなまとめにされた)の最後に、区長が「次はデザイン会議です!」と発表した鳴り物入り事業の第1回で欠席。ちょっと呆然となりました。

代わりにビデオメッセージを最初に上映。内容も「まちづくりから都市計画道路を考える」はともかく、「道路という公共空間を利用してどのような街にするのか」は、拡幅(延伸)事業ありきと取れる発言であるし、「さとことブレストの終点でありはじまり」「おおまかな合意に至る」とされては、反対する住民に何の合意を求めるのか?と懸念されます。
 

続いて担当部署の「沿道のまちづくりデザイン係」から会の趣旨説明。
ひどいのは、この部署新設なのに、全員男性(少なくとも当日前にいた人は。女性は受付などに回っていたとしたらなおひどい)。ジェンダー平等は?
 

説明の資料のリンクを貼ろうと思いましたが、記事を書いている現在6月20日、半月以上経っているのに、区のHPにアップされていません…。とにかく、あいまいなことばかり繰り返すパワポでした。
追加説明では「今後は地域ごとに」「公民連携プラットフォームを使って」たとえば「空き地(事業用地)にキッチンカーを出したい」という意見が出たら、どうやって実現できるか、部会を立ち上げる、など。今日「進め方」を考える割にはずいぶんさっさと行政が決めてしまっているし、立ち退きを迫られる当事者の前で「空き地にキッチンカー」とは、よくまぁそんな非道なことが言えるものだ。「沿道」というネーミングはそういうことなんだな、と思っていたら、さっそく当事者(133号線)の方から声が上がりました。
「133号線はまだできてない。私たちが住んでいる家なのに“沿道”とは何ごとか」
行政「都の事業なので我々の事業ではない(?)」
「係の名前から“沿道”を外して」
行政「ご意見として伺います」
なにこの「対話」は………この時点で、帰りたくなりましたが、外は雷雨だから残ったけど。
 
いや、実はもう最初から帰りたくて、私が書いた応募コメントは以下。
「さとことブレスト西荻窪一般区民の会では、ほとんどの人が道路拡幅は不要だ、嫌だ、代わりにこうしたらどうか、と話した。当時はまだみんな「対話」の結果が取り入れられて何かが変わらという期待をしていて、真剣に話し合った。ところがそれをまったく無視してシンポジウム、デザイン会議と拡幅前提で進んでいる。阿佐ヶ谷、高円寺でも同様と聞く。「デザイン会議で言えばいいのに後で文句を言う」と言われるのが嫌なので、仕方なく参加を申し込みます。区民の意見をリスペクトせず、はいはい素人考えを一応聴きました、おしまい、あとは決まったとおりやります、のパターンばかり。ものすごく疲れる。絶望するために参加するようなもの」
我ながらヤケクソでひどいのですが、ところがこんなことを書いたのに、冒頭の区民発言の抽選に当選したので驚いた。
 
が。
この区民発言、なんと80人もが希望して応募したのに、15人に抽選で絞られ、しかも一人2分。これは完全にお飾りに使われるだけだ、と思い、私は発言内容を全面的に「希望者全員に発言させろ」に変更せざるを得ませんでした。
 
こうして毎回(阿佐ヶ谷、マスタープラン、施設再編…)会のあり方から闘わなくてはならず、本題に入れない…その間に行政はどんどん事業を進めてしまう。
前区政ではこんな場自体持たれなかったのだから、という人もいるが、「対話しましょう」と言って区民を集める目的が実際は事業推進で、しかもちゃんと意見すら出させないのでは、大問題でしょう。
これは他の発言当選者もおかしいと思っていて、何人かの方は事前に要望書、入り口で全員に発言させろとチラシを配るなどの活動をしておられました。
 
しかしみなさん「大人」なので、最初は粛々と発言。以下はメモより。[ ]内は私の評価です。
 
1.[賛成]高円寺「さとことブレスト」のファシリテーター。道路ができたら楽しく歩けるように。通過交通の問題はある。強い反対、賛成があると意見が言えない。新たな住民も来る。必要性安全性を説明 ハードはソフトによって完成する。 道路を作って終わりではない。
2.[当事者・反対]221号線の住民で、反対している。80年以上住んでいる。杉並は緑が多く、人が住みやすい。交通量も人口も減少しており、拡げる必要はない。リノベーションの発想で。
3.[反対]221号線は高さ制限10mの第一種低層住宅地域。閑静な住宅環境を壊されたくない人たちを追い出してはならない。再開発で街が潤うなどは間違い。公がやるべきことは何か。
4.[賛成]阿佐ヶ谷マイタウン協議会(商店街)。最近大きな地震が多い。3.11のとき、阿佐ヶ谷は人で埋まっていた。地域住民45000人、中央線の乗客15000人をどう待機させるか。中杉通りはみんなの力で作った。
5.[当事者・反対]133号線住民。不安な日々。今住宅であるところに道路とは、区民がほんとうに求めているものではない。必要ないと確信している。利権が優先されている。
6.[懐疑的]阿佐ヶ谷南住民。ブレストでは渋滞はほんとうに解消するのか話されたが、青梅街道に交差点を増やすことに専門的検証が必要。防災は133号線を作るだけの課題ではない。木密地域では、住民が災害時に関わることが必要。
7.[当事者・反対]133号線住民。いまある街並みを子や孫に残したい。木を伐ったり自然を破壊したら、再度築くには50年かかる。もう道路は要らない。 環七スモッグでひどいことがあったのに。
8.[全員に発言させろ]後述。
9.[懐疑的]今のアメリカ型のバブル、不動産投機で建物の高層化が進んでいる。吉祥寺のハモニカ横丁のような街の魅力が求められる。
10.[懐疑的]ニシオギ南口住民。道路のことをこれまで何で知らなかったのか、 大変な問題だと今日感じた。にぎやかな商店街が変化している。ニシオギの魅力を消さないで、おいでよ、と、人を招きたくなる街にしたい。
11.[当事者・反対]132号線住民。2012年測量で初めて知って、説明を受けたら、残地買わない、代替地ないという話。毎日不安。ニシオギはのんびりした街で、沿道にはプラタナス。事業認可したから進めるのではなく、ちゃんと検討してほしい。拡げると再開発が必ず来る。そういうニシオギにしたくない。
12.[全員に発言させろ]抽選で、4/5の方がみなさんの前で意見言いたいのに言えなくなった。今後の方法を決める大事な意見、全地域が集まる機会。グループワークで発言できればいい、のではなく、みなさんに直接聞いていただくために応募したのを無にしている。 要望書を読み上げ。
13.[懐疑的]ニシオギのこと研究所。買収で、商店街にマンションばかり建ち、商店がとぎれとぎれになっている。行政は思ってないかもしれないが、道路整備でよくない方に更新されている。1Fは商店を入れるとか地区計画にできないか。道路の経緯の検証が必要。以前の駅周辺まちづくり懇談会は誰もが参加できるものではなかった、その議論の集積、公開、共有が必要。
14.[当事者・反対]132号線住民。戦後すぐの道路計画で、法的根拠も必要性もない。今は車の時代ではない。対案もある。ニシオギのまちづくりは、高い建物ない街を活かすべき。防災というが、延焼遮断は8mで有効という研究もある。
15.[懐疑的]仕事でまちづくりをしてきたが、今はこれでよかったんだろうかと考える。形とか機能の議論だけで、道路、公園、防災を作る。暮らし方の議論がない。街の姿、その上で防災どうしよう、道路どうしようと考えるべき。土地の細分化が進み、何もしないと劣化してしまう。
 
反対が過半数であることに加え、当事者(住民)の比率が高い。それは当事者のみなさんが、なんとか反対意見を届ける場を求めて、ここに来ていることの証明ではないですか。「デザイン会議は反対意見を言う場ではない」と言われても(それは行政が推進で揺るがないということ)、当事者が意見を述べる場が他にないのだから。
なお、8.は私で、内容は下記。途中「穏やかに喋ってくださ~い」ってトーンポリシング系のヤジを受け、行政からもごちゃごちゃ言われて全部は言えませんでした。
 
発言抽選に当たったので、ニシオギ愛を叫ぼうと思ったのですが、その前に、こんな会でいいのか?というのが立ち塞がってしまいました。一体何をはじまりの会?これまで私が伝えてきたニシオギ愛はどこに行ったの?
仕方ないのでここはニシオギ愛の話を諦めて、勝手にはじめるな、と、言わないといけなくなりました。
まず、デザイン会議(仮称)と言われて来たわけだけど、係の名前を見ると沿道デザイン、つまり沿道デザイン会議であることが隠されたまま、はじめようとしてる。道路拡幅ありきで、拡幅後の、要は潰した沿道をデザインしますよ、と。今人が住んでいる家は沿道ではない。庭や樹木も沿道ではない。勝手にデザインしてはいけない。
そして発言は一人2分。2分を超えたらマイク切られるのかな?さっさと沿道デザインをはじめましょう、そのためには一人2分、しかも15人。
これ、発言希望が80人もいたと聞いて。ねぇ、行政さん、その応募見てなんとも思わなかったの?考え直そうとは思わなかったの?当初の想定と違っていることがわからない?みんな一人一人の思いがある人間なんだよ、行政の思い通りにはいかないんだよ。
みなさん、ワークショップがしたいんじゃなくて、自分の意見が言いたいから応募したんじゃないの?
発言希望したけど落とされた人は?
やっぱり発言したい人は?
全員が喋るべきだと思う人は?
もしかしたら、発言落選したから来なかった人もいるかもしれない。ここで発言したいと手を挙げるのもちょっと勇気がいること。もちろん私だってケンカ売るの、膝ガクガクだよ。
沿道とやらで、これからもしかしたら最悪立ち退きだの補償だの、センシティブなことのある当事者だっているわけでしょ。「発言者は地域と名前言ってください、動画を配信します」?気軽に言うね。SNSで誹謗中傷されてる議員さんだっているでしょうよ。ましてやこちとら一般市民だよ?
そんな勇気を出して、わざわざ日曜に会に出ようとしてくれた、ねぇ、これだけの人たちを見て、進行を変えようとは考えないのか?発言したい人!この人たちを*1 リスペクトしてほしい。
どうするの?会の進行からして、この人たちをリスペクトしないで「決まったことは変えられない」いや「決めたことは変えない」のなら、この先の道路事業も同じ態度取るってみなされるよ。デザイン会議も対話の区政も信用なくすよ?
(早く道路作りたいから)時間がないから人数制限、お飾りの一人2分、それでいて回答と称して行政が「ご理解いただけるよう」話す時間はいつもフリーハンド。そのゴールはあらかじめ決まったとこに「合意していただく」。
*2 民主主義は時間がかかるんです。わかってください。かけましょうよ、時間。全員話す時間なくして何が民主主義か。
さぁ、発言させるのかさせないのか、検討してください。これで発言させないのなら「決めたことは変えないから」と、ハッキリ言えばいい。そんな結論ありきな対話にかける時間こそ、民主主義にはございません。
*1:リスペクト:岸本区長が阿佐ヶ谷の「振り返る会」で区民の追及に対して「私をリスペクトして」と言ったことから。
*2:民主主義は時間がかかる:岸本区長が杉一小の保護者との懇談で言ったことば。
 
しかし、どんどん発言を重ねられて(次の人にマイクを持たせて、切れ目なく発言させる)、私ともう一人の方(12番目)の「全員が喋る」意見はなかったことにされて、グループワークに突入。
 
グループワークは、6,7人の区民と2人の「他の部署の」区職員が車座になり、自己紹介のあと「デザイン会議の進め方」「デザイン会議で扱いたい議題」を話す設定でした。しかし、他のグループでは「区職員が自己紹介しなかった」とか、テーマの言い回しも微妙に違っていたりして、すでに全員が同じ条件で話し合うことになっていません。最後にグループで何を話したか、の発表の時間もなく、全体に区民それぞれの意見が共有されることがなく、単にその場の話で終わってしまった感じ。
ワークショップといえば「ふせんに書く」になってしまっていますが、この会でもふせんに書いただけ。
しかもほとんどは区職員が「まとめて」書いてしまった(黒ペンのふせん)。

ワークショップで「勝手にまとめる」のはご法度だけれど、区職員がそうした知識を持っていたとは思えず、ちゃんとした「ファシリテーター」としての訓練をしているとは思えない。それどころか、道路についても知識がなく、「よく知らなかったが、街が変わってしまうのではと思い」参加したという方が「事業認可とは区が出すのか」「132号線は区道なのか」「第一期工期とはなにか」と基礎的なことを質問しても、答えられず。仕方がないので私が答えました…(132は区道なので、事業認可は区が申請して都が出す。工期は前記事参照)。
なんでそのくらいの情報も参加者に与えず、いきなり話し合いをさせるのか。
 
全体に視覚障害や車椅子の方も多くきていて、それは障害者団体に依頼して「さとことブレスト」のバリアフリー会をやった流れらしいのだけど(そうでない人もいたかもしれないが、とにかく分断されていて全体が見えない)、私のグループの方は「前回は道路のバリアフリーについて意見を求められた。しかし今日話を聞いてみたら住民の人が立ち退きで反対していると初めて知った。そんな問題ある事業だったのか」というようなことをおっしゃっていました。まさに分断によって情報を与えないからこうなるわけです。
 
しかも会は、会場全体の司会者(区職員ではなく、民間業者)ひたすら時間がないから早く早くとせかし、「グループをシャッフルします」として話が深まる間もなく、ちがう車座に移動させられました。ちがうところに言っても、これまでどんな議論がされていたか、「ふせん」を見ても意味不明。それに、最初の車座でのふせんについても、その急かす司会者が「自分の話した内容がこれでいいか見て確認してください」と言うだけ。視覚障害の人には介助の人もついてきていたけど、それはハードル高いでしょうし、狭い(人と椅子が多い)会場で、車椅子の人も高齢の人もいるのに「席替え」とは。
これでは道路のバリアフリーもどうなることやら。そうやって時間のかかる人たちを追いてきぼりで「なんでも急かす」ことは結局事業を早く進めたいからだし、「対話」を進めるプロセスまでも効率優先なのは車に便利な直線道路につながっているのではないか。
 
「区民の声を聴く」といえば、「アンケート」か定番ですが、この会でもアンケートが配られました。杉並区は「LoGoフォーム」というWEBフォーマットを利用していて、それを推奨するのですが、そこもそもそもデジタルディバイドを生み出しています。用紙を配っているのだから、すぐ書いて提出すればいい、と言われても、その「すぐ書いた」ものとあとでゆっくり考えたWEB回答は条件が違うでしょう。
さらに今回WEBで回答しようとして、最初の5段階評価みたいなところに「登壇者の発言について」というのがあり、「15人それぞれ違うのにそれを一項目で評価?」「当事者はリスクを負って出てきているのに、それを関係ないほかの区民に評価させるの?」と、あまりの「リスペクト」のなさにうんざり。しかも「評価」の項目はWEBだと必須になっているのに、紙なら飛ばすこともできて、これまた条件が違う。
なにもかもがバラバラ。
 
そんなこんなで渾身の批判をまとめてLoGoフォームにコピペしようとしたところ、字数制限「2000字」。フォームは「2000字バージョン」と「60000字バージョン」があり、岸本区長が就任直後に「都市計画マスタープラン」について意見募集したときは60000
字バージョンを使って何百通と来たものを区長は「全部読んだ」と言い、区のHPにも全文公開されていたのに…(どっちの字数を使うのか運用はまちまち)。
きちんと構成を考えて、同じ罵詈雑言が重複しないようボキャブラリーを駆使し、かつては「全部読んだ」区長へのメッセージで締めた長文を削るのもハラが立つので、プリントアウトして郵送しましたが、まったく「民主主義は時間がかかる」のです。じゃあ急かしてばかりいる行政のやっていることは何なんでしょう。このまま「対話」の「まちづくり」が進められるのは、ほんとうに危険だと思います。
 
私のアンケート全文(2500字)は以下。
 
「沿道」デザインという言葉に尽きると思う。
道路拡幅・延伸は揺るぎなく実施する、その脇の「沿道」を区民にお飾り的にデザインさせてやる、というのがこの会議(仮称)の狙いなのだ、と確信するに至った。
 
本当に悪辣だし、しかも立ち退き、減歩の当事者を呼びつけて、あたかも何か道路事業そのものの話ができる場であるかのように期待をさせて、実際は拡幅ありきの「沿道デザイン」に参画させようとするとは、残酷無比、鬼畜の所業としか言いようがない。
 
都市計画の専門家に聞いたところ、このようなワークショップの手法は土地収用を伴うときには絶対やってはならない、しかも今回採用したワールドカフェ方式は「職場横断の職員研修」や「多文化共生のイベント」などで使うもので、何かのアイディアをまとめるものではない、とのこと。それを聞いて、要は「知り合い、仲良くなる」ことを目的としたワークショップだと理解した。
おそらく区は、これからデザイン会議の「はじまり」にあたり、参加者が沿道デザインのスタッフとして継続的に活動し、実動することを目指すため、初対面の参加者同士がつながる、仲良くなることを「はじまりの会」のゴールにしたのではないか。今後のスケジュールを聞いていると、どうもそうした区民のボランタリーな動員を図っているように思われる。
 
住民参加のまちづくりといえば聞こえがいい(から200人も来たのだろうが)が、ここにはいくつもの罠があり、そもそもの設定からして悪質な謀略である。
 
まず、いまだ当事者・地権者の反対が圧倒的な事業について、道路拡幅ありきでの会議の召集。特に当事者・地権者は事業を止めてもらいたいために、意見を伝えるあらゆる機会をつかもうとしている。区長が「対話」という甘い言葉で釣るものだから、余計にチャンスがあると、藁にもすがる気持ちになる。今回発言者には「最初に地域と名前を言え」と案内されたが、これから最悪立ち退きや補償があり得る人が名前と顔出しでYouTubeにまでアップとは、よくも軽薄にそんなことが言えたものだ。それなのに勇気を出して発言しようとしたのは、本当に数少ない発言機会を待ち望んでいたということではないか。
しかし実際に行われるのは「あなたの家や庭は(壊して)沿道になりますよ」「その沿道を(現状を破壊して新しく)デザインしましょう」と、臆面もなく言い放つ会議であり、事業への反対意見を汲み上げる回路ではまったくない。それを当事者・地権者に対しても、あたかも参画の機会であるかのように見せかけて召集するのは、失礼だし侮辱的な嫌がらせであり、具体的な土地と金銭の問題でもあるのだから、もはや詐欺行為ですらある。
 
ワールドカフェ方式により「意見の違う人が」「仲良くなり」「合意する」という設定も信じがたい虚妄である。まず想定されている「合意」とは区の事業への「同意」でしかない。しかも立ち退きしたくない当事者・地権者と、利権があるにせよないにせよ「にぎわい」だの「安全」だのと道路拡幅をその答えであると信じこんで賛成している者たちとが「仲良く」デザインができるとでも?
道路拡幅がいいと思う者たちは区に協力して、なんなら「沿道」の事業に参画して利益があるとよい、と思い、会を円滑に予定通りに進めたいだろう。根本的に反対したい者は「ここはそういう場ではない」とされ、排除されるしかない。なぜなら、その会が「どういう場か」は召集した区がいくらでも勝手に設定することができ、当日来て「これからどうやって進めるか」などを参加者に問うのは単なる茶番、そこでどうこうできるものではない。
 
そして、このデザイン会議の運営は、細かいグループトークや小刻みな時間配分、楽しく話し合ってくださいというプレッシャー(トーンポリシング)などの手法を駆使することで、区民が広く(参加者・行政の双方の)多数に向けて意見を伝えることを妨害し、自分が何をしているのか、全体で何が起こっているのか見えなくしている。こんなものは区民の分断と困惑しか生まない。なぜなら行政側が(意図的に)間違った方法をチョイスしているからだ。進行の不手際もわざとではないかと疑わしい。
 
はっきり言って、このデザイン会議は狡猾な落とし穴である。
反対意見を伝えるために出ようとしたら、それが事業を進めるための道具にされてしまう。しかし「対話の区政」と言いながら、対話の場は決して多くはなく、実質的に反対者どころか、当事者・地権者の声を届ける仕組みはない。だから反対者も出てくるしかない。
このデザイン会議の邪悪な倒錯をなんとか改善しようにも、中から変えるしか今のところ回路はなさそうだ。しかしそのために会議に参加したり、ましてや運営委員会に入るなどしたら、道路拡幅・延伸事業を進めることになってしまうジレンマ。非当事者で反対している者ならジレンマで済むが、当事者にとっては自殺行為になる罠か地雷のようなものである。非当事者としても、ただでさえ苦しんでいる当事者・地権者の人たちのことを思うと、こんな陰湿な企みに手を貸すことになるのは不本意である。
これからのデザイン会議への関わり方をどうすべきか考えると、心が引き裂かれんばかりである。落とし穴に落ちたくないのは当然だし、他人の墓穴を掘るような真似はしたくない。
 
私が発言(「意見を言いたい人」と申し込み、「発言」と当選の連絡が来て、当日行ってみたら「コメント」呼ばわりされていた)で言った「民主主義は時間がかかる」は、区長が他の件の当事者である区民に対して、区民が望む対話に応じないことの言い訳として言い放ったクリシェである。私は区長への嫌味のつもりで入れたのだが、区長は来場すらしていなかった。あり得ない
そして最後に適当に会を閉めようとした行政側が「発言にもありましたが民主主義は時間がかかる」とご丁寧に引用してくださった。
しかしこのデザイン会議という悪質な住民への拘束を利用して、行政がやっていることは「時間をかけておいて」その間に「道路拡幅・延伸事業を後戻りできないところまで進める」ことである。
もちろん、そんなものは民主主義ではなく、暴力でしかない。
 
 
 
 
 

阿佐ヶ谷で起きていること

ニシドラは都内・区内の各地再開発に首を突っ込んでいるんだけど、杉並の顔、阿佐ヶ谷北口駅前中杉通り沿いの杉並第一小学校から東の河北病院まで)にも問題が。
これはいろいろ入り組んでいるので、ぜひ「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会(私はチラシや動画制作で参加)」「けやき屋敷のみどりを心配する会」のサイトを合わせてお読みください。
 
これまでの経緯はざっくりこんな感じ。
2015(H27)年:杉一小の建て替えが決まり、学校関係者や地域代表による改築検討懇談会が設立。区の施設(産業商工会館)との複合施設にして、現地で建て替え。現在の阿佐谷地域区民センター(当時はけやき公園プール)に仮校舎。
2016(H28)年:河北病院の移転建て替えが決まる。河北と杉一小の間にある巨大な「けやき屋敷」を取り壊してそこに移転。けやき屋敷は周辺の大地主である相澤氏のもので、現在の河北病院の土地も相澤氏からの借地。杉一小も明治の学制改革のときに相澤家が寄進した土地。
2017(H29)年:杉並区が突然、杉一小の現在地建て替えを「河北病院跡地に移転」に変更すると発表。同時に杉一小、河北病院、けやき屋敷、周辺の商店街を含む「まちづくり計画」が発表される。

当時からの問題点:
けやき屋敷の屋敷林を伐採し、高層の病院(40m)が建つこと。これは今、神宮外苑日比谷公園などで、市民の「木を伐るな」という批判が主流になっていますが、当時はちょっと早かった。阿佐ヶ谷地域は以外と緑が少なく、個人の宅地とはいえ、大木の林は貴重で猛禽類のツミも営巣していた。
・杉一小の移転先の河北病院は土地が低く、水害のおそれがある。元は沼地(暗渠化した桃園川と弁天池)で軟弱地盤。古い病院なので医療廃棄物で土壌汚染されている。全国でも病院跡地に学校を作ったのは沖縄の養護学校(それも酷いが)一例のみ。
・病院の移転は民間の事業なのに、なぜかそこに杉一小を含む三角交換になった。これは「土地区画整理事業」という手法で、売買ではなく換地で用地をまとめる。相澤氏(欅興産)河北病院と杉並区(田中良前区長)が「個人共同施工」で合意。区有地なのに議会にも諮らず、学校関係者の合意も取っていない。
・これまで現在地建て替えで立案してきた学校改築検討懇談会にまったく知らせず、突然移転を決定した。
・しかも駅前の杉一小と、細い道に囲まれた低湿地で病院跡地となる河北病院の土地は、あまりに評価が違うのではないか。つまり、区が損をする換地ではないか(これは単純な換地ではないので、以下リンクをご参照ください。また、換地条件については区の隠蔽に対し、複数の情報公開請求が継続中)。
 
・地区計画の変更により、杉一小の土地を欅興産が取得して最大60mのビルを建てることが可能に。
 
これらの問題のうち、けやき屋敷の緑は惜しまれながらも伐採され、現在は病院の建設が進んでいます。

(工事現場の外壁に貼ってある完成予想図。これを見て近所の人たちが驚き、騒ぎはじめた)。
 


2022(R4)年:区長選で岸本聡子新区長が誕生。選挙中は「おかしいことは見直す」として杉並区の施設再編や駅前再開発も批判していた。
 
現在まで:
2023(R5)年:岸本区長が掲げる「対話ですすめるまちづくり」の方針により、「阿佐ケ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会」が3回、オープンハウス形式の意見交換が開催される。杉一小保護者や生徒も発言し、移転への懸念を表明。ほとんどが反対意見で、会は紛糾。

特に保護者や周辺住民から問題視されていること:
・杉一小はブラスバンドなどの活動が盛ん。大通り沿いで大きな音を遠慮なく出せる現在の環境から、住宅地に移転しては、周辺からの苦情が心配。
・その他、学校はチャイムや放送、運動会などの行事で大きな音が出る。
・駅前立地は保護者にも利点があり、地域とともにある杉一小の教育風土を築いてきた。
・生徒や学校側の意志を尊重してほしい。
・校庭が広くなるというが、近隣との緩衝帯を作ったらどれほど広くなるのか。
・大雨で水没しかねない土地は避難所として不適切。
 
そして大きな問題は区の「対話」の会が、移転ありきの「説明」であり、区民の意見に対しては、なんらきちんとした回答がなされないまま。
2024(H6)年:岸本区長が「杉一小は移転建て替え」のビデオメッセージを発信。
 

(現役保護者の方が作った資料)
 
現在、あらたな改築検討懇談会が組織され、移転案で進めようとしているが、参加している学校関係者は移転に反対の態度を変えていない。
また区は「あさがやまちづくりセッション」というワークショップを募集。阿佐ヶ谷地域のまちづくりを考える会のはずが、その第1回は「杉一小移転改築」をテーマとしています(参加者は杉一小関係者に限定されていないのに)。この件については、まもなく[阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会]のブログでレポートされる予定です。