ニシオギDRUNKerシンブン

再開発に反対するニシオギDRUNKerです。各地レポも。

「対話の区政」について岸本区長に手紙。

2024.7.13岸本聡子区長が荻窪駅前でひさしぶりに(投票率アップひとり街宣とか、選挙応援ではなく単独の)街宣をおこなう、というので、「対話の区政」の問題点について「直訴」をすることにしました。
 
雨の翌日で、気温も少し下がっていて、お日和よろしく。スタッフ10人くらいが精力的に新チラシを配っていて(軍艦島のTシャツを着ている人がいて、ちょっとどうなのか、と思った)、通行人も受け取りもよい。「対話でつくるみんなの杉並」というノボリもひるがえっている。まさにそれを批判しに殴りこ…いや、「直訴(江戸時代なら打ち首)」に来たので、緊張しますね。
継続的に聞いている人10人くらい、最終的に50人くらいか。通行人も区長に好感度高めの感じで、あとふつうに路上で演説していることにびっくりする(それで親しみを持つ)ような反応も。でも、前はもっと街宣していたし、質問も受け付けて「対話」していたんだけどな。ジャーナリストの人もこの機会にと、けっこう厳しい質問したり、道路の当事者の人が訴えたりしていたんですけど。今日は30分だけなので、演説のみ。なんだか都知事選で露出を減らして当選した現職を思い出す…。
演説は、「女性初、2年目です」を連呼。今日は調子よく、堂々としています(堂々としていないときがあるのよ…)。
話のテーマは都市計画道路、子どもの居場所、パートナーシップ、環境会議、善福寺川、対話の区政。
いきなり(私には)本命の都市計画道路だ、何を語るのかな、と思ったら「デザイン会議やりました」だけで、具体的な話はせず。ありゃ。しかし、この「デザイン会議」を「対話の区政」として道路事業でやろうとしているのが、問題だと思ったからこそ、カチこ…いや、「直訴」に及んだわけです。
 

(沿道)デザイン会議、がひどかった話。 - ニシオギDRUNKerシンブン

 

あと、阿佐ヶ谷の方にも関わっている私としては、同じような「あさがやまちづくりセッション」も、出た人から問題があった、と知らされて懸念しています。こちらの記事では「ワークショップ」とはなにか、ということを専門家が解説しているので、それでさらに問題点についてはっきりとわかりました。

 

あさがやまちづくりセッションの問題点 - 阿佐ヶ谷駅北口・杉一小改築問題情報

 

そこでしたためた直訴状がこちら。

「デザイン会議」に出したアンケートみたいに罵詈雑言ではなく、きちんと書きました。明朝体でプリントアウトしたし、封筒に猪熊弦一郎のネコちゃんシールも貼ったし。ほんと、区長、読んで(打ち首なしで)。

 

杉並区長 岸本聡子様

 

本日は区長が掲げている「対話の区政」について問題を指摘いたしたく、お手紙を書きました。

先日の「(仮称)デザイン会議」に不本意ながら参加し、行政が事業計画について、ワークショップを使うという手法そのものに問題がある、と考えました。私は参加していませんが、「あさがやまちづくりセッション」でも同様の問題があったと聞きます。

 

気候会議やソシアルサトコズの集会、あるいは区職員の研修としてワークショップをするのは、よいと思います。気候変動を止める、行政で働く、などの同じ目的に向かう人の集まりであれば、互いに交流と意見を深めるには有効でしょう。私もアート系のワークショップに参加したこともありますが「作品を作る」という共通目的があれば、ワークショップは成立します。

それでは「(仮称)デザイン会議」の目的はなんなのでしょうか?補助132,133,221号線を拡幅延伸することです。しかし区の募集に応じて実際に参加したのは、拡幅延伸によって立ち退きや減歩される当事者で窮状を訴えたい思いで来た方々が多数、それ以外にも現在の街を愛し、守りたいという意見の人も多かったです。

そのような「反対意見」の参加者を集め「道路を作るため」のワークショップに参加させるのは矛盾でしかありません。反対している・立ち退きさせられる人たちが、「道路拡幅延伸による沿道のまちづくり」をやりたい人たちと同じ目的に向かうことができるでしょうか。その場で目指される「合意」の選択肢には、拡幅延伸しかありません。なぜなら会議の背景には行政側の事業計画があり、そこには反対意見の方向への「合意」の可能性はありません。

こんなことならいっそ「杉並区は道路を拡幅延伸するので」それに賛成の人限定で対話する、当事者不在の「沿道デザイン会議」であると明言して募集した方が正直です。

「あさがやまちづくりセッション」では「杉一小改築」をテーマにしていましたが、移転に賛成する人(学校関係者以外も)たちだけで新しい学校を考える場として設定されたのでしょうか?

 

さらに「(仮称)デザイン会議」で使われた、途中で席替えするなどの「ワールドカフェ」形式も、ふさわしくないものでした。席替えは異なる属性の参加者同士の交流目的ですが、道路拡幅延伸に反対、どころか、それで被害を受ける当事者が、道路を拡げてまちづくりをしたい人たちと仲良くなって事業を進めることができますか?

また、席替えなどによって進行をやたらと急かすのも、まったく熟議には繋がらず、それどころか高齢者や障害のある方が多くいる場でまったくバリアフリーではなかった。そして、会議の進行をむりやり区の意図のとおりに急かして進めるのは、それが道路事業を乱暴に推し進めることとシンクロナイズして感じられました。

 

岸本区長は「対話の区政」を構想する上で、「区民同士が議論する」ための手法として、ワークショップを使われているのでしょうが、なんでもかんでも同じ方法論は通用しません。何度も言いますが、同じ目的に進む人たちのブラッシュアップならよいのです。が、賛否が分かれている、同じ目的に進む意識が確認されていないのに、ワークショップはありえず、それは単なる反対者の包摂・懐柔策になってしまいます。

また、道路事業にしても杉一小移転にしても、ワークショップという方法論自体についても、区民や行政側参加者の間での知識・情報に格差があり、そこでいきなり「区民同士の議論(担当でない行政職員をファシリテーターにしたのも論外)」は無意味です。このケースでまず必要なのは、行政と区民(当事者)のきちんとした「対話」ではないでしょうか。

対話の前提となる情報には、行政の計画だけでなく、当事者の意見や立場(反対含め)を知ることが必須ですが、「楽しいワークショップ」をやりたい非当事者区民からは、反対意見があるのは迷惑、とまでみられています(当事者の方へのブーイングすらありました)。

しかし、広く区民が参画する議論(「(仮称)デザイン会議」にしても「あさがやまちづくりセッション」にしても、今後の「下井草まちづくりラボ」にしても)の大前提として、まずは(困っている)当事者の意見を参加者・行政が徹底的に聞いて知ることが必要ではないでしょうか。抽選で当たった人が短時間のコメント、などではなく、当事者の(反対)意見をすべて述べる場を設け、会議に参加する人すべてが(嫌でも)それを知るべきです。もちろん、区長を筆頭とする行政職員も全員が。当事者の方たちは、行政、特に岸本区長に話を聞いてもらいたいはずです。

 

それなのに「(仮称)デザイン会議」「あさがやまちづくりセッション」のどちらにも、第1回、「はじまりの会」であるにもかかわらず、区長ご自身が参加されなかったことには驚きました。当事者の方は区長に意見を伝えるチャンスと信じていたし、非当事者では「区長と一緒に話し合う」ことを楽しみにしていた方もいました。何よりも「対話の区政」の旗振り役であり、道路や杉一小事業の責任者である岸本区長の不在によって、誰に何を言っているのかわからない、無責任なワークショップがルーティン的に進められて、終わってしまいました。

区長には今後、きちんと現場を見た上で、「対話」の前提である当事者の意見を反映・共有する方向に切り替えていただきたいと思います。「対話の場を設ける」ことはできている、内容ややり方を修正し、質を高め、実のあるものにするチャンスは今ならまだあります。手遅れになる前に。

 

*********************************

演説全体についてのメモ(とツッコミ)。
・対話の区政を推し進めてきた、なんのための対話なのか(こっちが言いたいわ!)、杉並区の民主主義を一歩一歩、対話の区政進んでいる。
都市計画道路とまちづくり:
デザイン会議が発足(二週間前と言い間違い。出てないから間違えたのでは…)。都市計画道路からまちづくりをみんなで考えていく。
ひとしきり挨拶(岸本聡子です、女性初の~2年間やってきました~)が入ったのち「都市計画道路のお話しをしました(えっ!これだけ?)」
・続けて子どもの居場所
施設マネジメント計画、区民みんなの財産コモンズを守りながらみんなで運営していく。上荻、高井戸、西宮でワークショップ。子どもの権利条例の準備が着々と進んでいる。16人以上のお子さんのご意見を聞いた。子どもの視点から条例だけでなくまちづくりを考えてみよう。
・次のテーマ行きます(なんか元気な言い方だった)、性の多様性
パートナーシップ、全国85%の人口をカバー、杉並区35組、事実婚を含めたい。
・チラシの説明
気候区民会議:もうすぐまとめ。すこぶる面白い。
会議で出ているアイディア:杉並電力 10分で森林浴 自転車に乗る時間をひとりあたり10分から15分に 日焼けどめを塗らずに自転車に乗れる 樹木
・みなさんの中にもなにかしら参加してくれた人がいるかも。無作為抽出のハガキが届くかもしれません。こんな問題考えたことなかった、という人にも参加してもらい、多様な意見を。
地域の主権、杉並区の民主主義を一歩一歩進める。
善福寺川緑地 水害が発生、心配ごと。治水対策インフラ整備やってきた
流域治水:インフラ整備と並行してグリーンインフラを進める。
・区報でお知らせした「大雨の時にお風呂の水を流さない、洗濯しない」みんなで取り組む治水対策(自助努力…)
善福寺川をひとつのモデルとして。
・公共施設に木を植えたり土に戻す。
・島谷先生の専門家チームと協定、グリーンインフラの数値をみんなで計算、雨庭を作ったり。
・みんなで作る対話の区政
私に投票しなかった多くの人の意見を聞く。職員と一緒に対話集会に参加してきた。2年目、折り返しとなりますが、その先も見てる。
・選挙の争点だった都市計画道路とまちづくり(を、どうする、と言わない)、パートナーシップに事実婚、子どもの権利条例、子ども食堂を支えるのが行政の役割。子どもから見るまちづくりを進める。
・チラシの紹介
都市計画道路や都市開発は簡単に変えられない。ゼロに戻すことはできない。やり方を変えていく。
・私に投票しなかった人の声も含めてみんなの声を聞いていく。
**********************
感想。
最後の無作為抽出と「私に投票しなかった人」の話、「対話の区政」についてのまとめになると思うんだけど、まず当事者の話を聞いて!というのが、私の直訴状のまとめなので、あー、やっぱりズレがあるなぁ、と。投票しなかった人の声を聞く、というのも、一般論ではたいせつな(当たり前の)ことなんだけど、じゃあ投票しなかった人というのは再開発がしたいから、とか、環境とか保全しなくていいと思っているから、ジェンダー平等とか大嫌いだから、岸本聡子には投票しなかった、という人もいるわけじゃないですか。前区政のやり方に問題があります、と言って、そこに投票した人がいて、今の区政があるわけでしょう。そこで、前区政の事業を進めたほうが利益があるからどんどん推進してくれ、という人の話を当事者の声と同等に扱ってしまったら、結局批判のあった事業も継続するってことになりませんか。
そこで「やり方」を変えて「対話の区政」にします、と言われても、「対話拒否で道路を拡げる」か「対話して道路を拡げる」か、なら、当事者の被害は変わらないのでは。
 
ほか、気になったことは、子どもとか環境の課題の中でも「子ども目線のまちづくり」と、まちづくりのことが出てきたり、浸水対策としての「公共施設の緑化」も施設再編(統廃合)や杉一小移転改築などで「緑化するため」という理由を持ち出されないか。警戒が必要だなと思いました。まさか杉一小移転予定地の現・河北病院の浸水問題の対策が、校庭を緑化して治水するグリーンインフラ?
その治水の課題、善福寺川の話では、今問題である「グレーのインフラ」である大土木工事である善福寺川上流調節池の「ち」もなし。樹木伐採、公園潰して、シールドマシンで地下40mに大トンネルつくる、これは東京都の事業で、杉並区はそれに(自助努力の)グリーンインフラを付け足します、というように思えます。
なんだか疑念と不信ばかりで、まったく不幸せでイヤらしい聴衆ですが、でも、まとめの「変えられない」は間違いなく「変えない」宣言ですね。私は「2年間なにもしてない」と受け取りましたが、いろいろな課題について情報のない通りがかりの聴衆の人たちはどう聞いたのかな?