南口はこぢんまりとした商店街、そこから石神井公園に下っていく住宅地、古くからある街並みがそのままになっています。
(黒いスワンボートがいた)
この問題には二つの側面があって、まず、石神井公園周辺の景観の問題。駅前だけでなく、練馬区の貴重な自然である石神井公園からの景観を保全(2011年・練馬区景観計画)する観点で、2012年に地区計画が定められ、35mの高さ制限(※例外で50m)がかけられていました。その条件が石神井公園からのスカイラインでした。
(※公開空地を設けるなどで「ボーナス」で規制緩和される)
それをわずか8年後の2020年(当然この再開発事業ありきで)に規制緩和して、2000㎡以上の敷地の再開発なら高さ制限なし!にしたのです。
よくもまぁ、どこもかしこも同じ手口で街こわしを進めるものです。
これが現在の当該地。駅を出てすぐです。ららマートとかあったとこ。商店街の入り口がこの状態(工事期間中ずっと壁)なのは、再開発ビル以前によろしくないです。
そして再開発に抵抗しているのが、この医療ビルです。
[裁判について]
地権者と、周辺住民の「サポーター」の方が、事業差し止めの行政訴訟を起こしています。
しかし、その間も見てのとおり事業は進み、今年2月には「明け渡し請求(要は立ち退き)」が出されます。
裁判中でも事業は停止できない原則ですが、東京地裁は3月13日に「土地明け渡しで生活環境や地域社会との密接なつながりを失う損害は、回復が容易とはいえない」として、明け渡し請求の5カ月停止を決定!快挙!
しかし、組合側が即時抗告し、5月9日に東京高裁は「再開発で建設される高層ビルの区画を地権者が取得予定で、建設工事中も仮の住居を確保することは難しくない」「明け渡し請求の停止が必要なほど、重大な損害は認められない」と、決定取り消し。
[傍聴してきた]
そして2024.5.16東京地裁103法廷で行われた第11回口頭弁論を傍聴してきました。
地裁で一番大きい97席が満席で、ほとんどが市民側でしたが、相変わらず区や組合は黒スーツでSDGsバッヂ(再開発や樹木伐採する人が付けがち)ですぐわかる、それが1-2割くらい?
本来、2.8の口頭弁論が最終で今回は結審のはずでしたが、突然、これまで訴訟に参加していなかった(都と区が弁論していた)再開発組合が弁論を希望し、判決言い渡しが延期になりました(それが目的)。
再開発組合弁護士の答弁は「たっての希望で声を聞いていただけることになった」と始まり、組合の顧問弁護士となり、現地に行ったら、駅前が歩道車道なく危険だった(ベビーカーのお母さんを持ち出すの、道路拡げたい側が、よく利用する手口)。再開発組合はこれをきちんと整備するにあたり「街路事業」にすると「土地収用」となり、現在の事業者が戻って来られない。戻って来られるよう「市街地再開発事業」にした(※)。
組合は立ち退く方々に「配慮」して、強制力がある中みなさんにご協力いただけるよう「配慮」している。それなのに「原告の主張には名誉毀損がある」というものでした。
(※これは前記事羽村のときも同じで、土地収用:買い取りでなく、権利交換や換地で再開発地区に入ればいいというもの。その間の仮設移転の負担や、権利床と現状の差異などがあるが…)
これに対して原告弁護士は、最初の裁判官とのやり取りで被告の答弁を先にするよう要求し、有利な後攻での答弁。うまい!再開発組合の論点のおかしさ、今なぜ出てきて答弁するのか、を、ビシッと追及。これは後攻じゃないとできない。
以下、ざっくりとメモした論旨。
「話のすり替えである。
なぜ再開発が必要なのか、再開発によってこれまでの[地区計画]が変更されている。「130mだったものを“配慮して“103m、99mにした」と言うが、この変更によって区画の中では今後誰でも高さ制限を緩和したビルが建てられるようになる。それが住民参加の景観計画を変えることになる。
再開発事業者は控訴があると知りながら、1月に「権利変換」を行い建物の解体をどんどん進めていて、今年12月解体終了のスケジュールを改めない。
施行停止の判決は5月9日高裁に取り消されてしまった。「原告は肉体的・精神的に相応の負担があるが、再開発ビルに入れるので利益になる」とされた。
(これまで都と区に任せて訴訟に参加しなかった再開発組合が要求した)弁論再開によって判決言い渡しを遅らせることで、今も建物の解体・インフラの撤去が続いている。
私たちはできるだけ早期に[地区計画]の違法性を確定したい」
次回期日:判決言い渡し:7/29(月)15:00 東京地裁103法廷。
(執行停止の取り消しで、解体は暴力的に進んでいる)
[裁判の解説]
私は参加できなかったのですが、一緒に傍聴した阿佐ヶ谷の仲間が、事後の弁護士解説会に参加して、そこでの内容を教えてくれました。
石神井公園駅南口再開発事件:弁護士解説
1.前定
・原告(地域住民の皆さん)
・被告 東京都
補助参加*1 練馬区
補助参加*2 再開発組合(2024/3/29参加申立)
・請求の内容 再開発組合の設立を認めた都の認可は無効
・提訴年月日 2022年8月1日
2.再開発組合(以下、組合)はどうして補助参加をして「引き延ばし」を図ったのか。
1)2022提訴以来、組合の弁護士は傍聴し、訴訟の流れを知り、2月結審までにいくらでも補助参加の機会はあったが、今年3月13日の本訴における執行停止決定によって、「行政訴訟で住民側が勝つ訳がない。東京都と練馬区に任せておけば大丈夫」という見通しが危うくなり、「都が負けるかもしれない(その結果、組合の設立認可は無効)」と考えたから。
←その位今回の「執行停止決定」はまれな事(前代未聞?)であった。
2)組合は、1月に「権利変換」、2月9日に「土地・建物の明け渡し処分」をして、解体を急ピッチに進め、ガス・電気・水道などのインフラも撤去している(現状は8割方解体が済んでいる)。
3)組合側の補助参加、口頭弁論に向けた準備書面の要点
①当初の130m計画を99mに下げた。
②練馬区の景観計画や景観形成基準を遵守する内容に変更した。
3.解体が進みくだんの土地が更地になった場合に「事情判決」の対象になるのか。
2)会場に池尻練馬区議がいらして、「跡地にタワマンが建った後なら、” 処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しない場合に”なるかもしれないが、更地になった位では当たらないのではないか。」と言われていました。
3)尾谷弁護士は結審した2月までにも、今回の口頭弁論でも「こんなに解体が進んでしまった今では、組合認可が無効となり原状回復は困難」などの主張は全く出されておらず、少なくとも1審で「事情判決」の余地は無いのではないか、という事であった。
※違法判決が出ても、事業取り消しが「公共の福祉に適合しない」場合、棄却される。つまり、不可逆的に事業が進んでいて、止めると莫大なお金(行政だから税金)の損失がある。でも、それ、やったもん勝ちになって、裁判中にどんどん進めれば棄却に持ち込めるってこと?
4.執行停止と取消
「執行停止の取り消し」は東京高裁が、5/9に行った。理由は、執行停止の根拠(行政訴訟法第25条2項)「重大な損害を避けるための必要性」を欠くため。
・精神的な苦痛は認めるが、
・いずれ再開発ビルに戻れるし、
・新しい場所で営業できる
これに対し、弁護士たちは、即日(5/9)最高裁へ「特別抗告」し、高裁へ「許可抗告」をした。
[追加 :移転予定の石神井庁舎の現状 ]