
2024年に葛飾区役所が立石北口再開発の高層ビルに移転することに対して、区民237人が原告となった住民訴訟、2025年9月19日に地裁判決が出ました。
今回も最大の103法廷がほぼ満席。原告団はバスを仕立てて傍聴に。
しかし、民事の判決は一瞬。
申し立てを却下する。費用は原告が支払う。
これだけで裁判官は退席。
あっけに取られる傍聴者に対して、弁護団が議員会館で説明会を開きました。
そこで配られた声明がこちら。

判決には「理由」というのがつくのだが、それは読み上げられなかった。なぜ却下か?再開発組合総会で計画可決したのは2022年12月。住民監査請求は1年以内に行うべきだが、していなかった、ということが原告の手続き不備とされた、ということ。
これに対して、加藤芳文弁護士から総論。
「民事は結論だけで、後は判決読めというのが結審。これは傍聴がこんなに大勢来ないことを前提としている。
駅前の再開発は自治体とゼネコンが結託して高層ビルを建て、儲けさせる。それだけじゃないぞ、と。地上げが流行ってきてる、私のとこ(事務所に相談が)2件来てる。押上2丁目で、家に上がりこんで6時間帰らない。もう一つは月島、20-30世帯を安く買って追い出す、というもの。地上げはバブルの頃よくあったが、また始まっている。
街壊し、駅前再開発だけじゃない。要りもしない何十年も前の道路計画を通す。
葛飾区民なら葛飾区政を監視しとかないと何やるかわからない。恐ろしい時代になってきた。
ほんとうのまちづくり、必要なものは、緑豊かなまちづくり、それだけをやるべき。そこではみなさんが主人公だ」
再開発全般に視野を広げる加藤弁護士は、相変わらずかっこいいですね。
そして熱血の舩尾遼弁護士が全体の詳細説明。
「結論から言うと却下、敗訴判決である。何点か見るべきところがある、中身について不当なところ。
ポイントは二つ。
・訴訟自体が適法か:権利変換が財務会計行為の訴訟にあたるかどうか。
・床の価格が高すぎるという原告の主張。
今回、床の取得を財務会計行為として一部肯定、これは今までなかった、画期的判決。
私たちは再開発法が不当と訴えてきた。組合を作ってその中で再開発、黒字にするためにビルの床を売る。私たちの街なのに区民が口を出せない。ふつうなら都市計画決定して都市計画審議会が決める。再開発になってしまうと、一部の地主さんが決める。そこに区が入って、みなさんの財産なのになんだか知らないうちに決まっている。オリンピック村(晴海フラッグ)も東京都がデベロッパーに1坪1000万円を80万円でなげ売りした。
今回、再開発組合で(区が)議決権を行使することは財務会計行為だと肯定した。議決権があった、区がこんなことをしたとわかった時点で監査請求できる。これからの市民運動を前進させる。
しかし非常に不十分。地区計画は、区民に計画縦覧期間があり、意見募集し、その後に都に認可申請を出す。組合の総会の時点が財務会計行為となるが、区民がその議決を知るまで時間かかる。そこ(組合総会)から住民監査まで1年過ぎてるから却下しますと言ってる。法律(地方自治法)の立て付けを検討してない。
実際まだ決まってもないことに監査請求しても、できない。地方自治法142条2項の「正当な理由」にあたる。
裁判所は時間過ぎてるから内容は判断しない、とだけで、葛飾区の行いが不当かどうかは言わない。政治に立ち入らない。
これではおかしいとは思っても、いつまで経っても争うことができず、その間に区民財産がどんどん流出してしまう。
今回岩見良太郎教授の意見書が採用されたのは大きい。ここでは床価格が数字をいじって取得された(区が損する)ことが指摘されている。計画が進むように他の地権者に配慮し、事業を赤字にさせないために区の財産で援助した。
これから(2025年11月)区議選と区長選がある。駅前再開発でどんどんお金かかるが、どうせ税金で出すからいいよ、とみていることが明らかに。
控訴するにあたって、原告団としての委任状をいただくが、237名全員は大変。法廷には来ていただかないと困るが、法訴的には誰か一人いればできる。
岩本拓也弁護士からは
「画期的な部分もあるが、やはり判決にはおかしいところがある。権利変換を認め、二倍も(の価格で床を買って)区の財産を流出させた。
しかし、(葛飾区が)組合の中で議決を行使することは財務会計行為の対象、というのは、一部とはいえ画期的」
ほか、柏木優孝弁護士、今嶌千晶弁護士からは、とにかく大勢の住民が傍聴に詰めかけたことが、裁判官にプレッシャーを与えた、という感謝の言葉も述べられました。
ここからは質疑。
Q:判決聞いただけではわからない。棄却と言われたら「えーっ?!」とか言っていいの?どっかに連れて行かれてしまう(怖)?
A:弁護団からぜひそうしてとは言えないが、言っていただいて構わない。どうせ退廷させられてもそこで終わるので。可視化するために空気を出していただきたい。
Q:判決がよく聞き取れなかった。どういう表現で言ったのか。
A:判決には主文と理由がある。理由はなんでその判断に至ったか。今私たちがした説明は理由について。法廷で述べられたのは、「青木(葛飾)区長は(床差額の)損害分を支払え(という提訴)」、に対する棄却だけ。主文しか読まないのは勝訴のときでも同じ。裁判官が力を入れている時は理由を読む。一般的には裁判官はヤジが怖いから、走る(ようにして帰る)。
Q:弁護団説明会は終わってから説明されるより、次はこうだ、という説明をしてくれれば、反応できる(みんなヤジりたいらしい「判決不当!」)。
A:事前説明会は何度かして、こういう書面を出した、と話していた。今回は判決なので、事前に話せることがなかった。
再開発事業にはふつうの区民は入りこめない。施行するのはこれまでは民間企業がほとんどだった。最近、自治体が入る傾向があるが、これだけ大きいのは葛飾が一番。
Q:判決が出るまで裁判官の中でどんな論議があったか、経過報告はないのか。
A:あったらいいですけど…。
しかし、一部分も認めないで逃げるだろうと思っていたが、最後に私たち出した書面で、「こんなおかしなことが起きているのは、地方自治法の趣旨が骨抜きになる」と追及しておいた、それで一部でも認めたのではないか。
3人の判事のうち誰がどう判断したのかは秘密で、2:1か3:0かも発表されない。最高裁は別で、よく報道に判事の意見も載っている。
ちょっとわからないところがあったので、私も質問させてもらいました。
Q:組合での議決が財務会計行為で、住民監査の対象になる、ということだが、それから1年以内に請求しなかったから無効であると判断されてしまった。高裁でも無効と言われるのか?この画期的判断をこれからどう活かしていくのか?
A:控訴審では議決権行使の時だ、と言われても、それは法律の仕組みと合ってない。議決の後に縦覧、意見、場合によっては修正、認可申請を都に出す、ここまで内容は確定してないものだ。確定して初めて議決権と私たちは思う。
意見によって修正されれば文句ない内容になるかもしれない。だからそこの時点で監査請求しても仕方ない、というのが疑問。法律の仕組み上、東京都に申請を出した日(に内容が確定)というのが正しい。そこはおかしいと言える。
地方自治法は「正当な理由がある(天災とか)ときは」とあるが、今の法律の立て付けの不備が理由になるのでは。事業計画が確定してないんだから。
そもそも申請をいつ出すのかは、組合の事情で半年前に出すかもしれない(監査請求をさせないタイミングにできる)。一審では否定されたが、この論点は争いにできる。同時に中身も突き詰めていく。
この判決理由を見たら、葛飾区はヤバいと思うだろう。葛飾区は監査請求を却下したが、判断せざるを得ない。この判決なら早い段階で行政に公式に文句を言える。使い勝手のいい判決が出た。
A:晴海フラッグの判決も都知事が権利変換同意したタイミングでも却下され、「財務会計行為に当たらない、同意から期間が経過している」という判決が出た。しかし同意とか議決権行使で決まるわけでなく、権利変換処分がされて結論が出る。そこから争いにできるはず。今後もそこを主張していく。
敗訴が予想されていたとはいえ、力強い即!控訴!そして「画期的判断」を今後の裁判に、そして他の地域での再開発との闘いにも活かしていこう、というパワフルな弁護団、そして原告団。
今後とも希望を持って注目していきたい裁判です。しかし、ごちゃごちゃしてる間に工費高騰で頓挫しないかなぁ。