ニシオギDRUNKerシンブン

再開発に反対するニシオギDRUNKerです。各地レポも。

デザイン会議がまたしてもひどかった件。

2024.9.8(日)桃井第三小学校で(仮称)デザイン会議・西荻窪第1回が行われました。
6.2に高円寺、成田東と3地域合同で「はじまりの会」として行われ、発言した地権者の方たちの事業を止めてほしいという主張を押し潰すような「沿道のまちづくりをデザインしよう!」という空疎なワークショップ。しかもこうした集会にワークショップを使うことの不当性、そのことに杉並区が無自覚であることも深刻です。

https://nishiogidrunker.hateblo.jp/entry/2024/06/21/005558

https://asakitas1.hatenadiary.jp/entry/2024/06/26/005214

さて、前回もっとも参加者が多かった西荻窪では、どうなるのか。こんな道路拡幅事業推進ワークショップに参加するのは加担することになるのではないか。しかし出ないと批判の声も届けられないし、「悪いこと」しないか監視も必要。
さらに同日、西荻窪の新たな大問題「善福寺川上流調節池」の説明会が入ってきて、ほんとに参加したくない、とりあえず前半だけで、と、重い足取り(チャリ)で桃三に出向きました。

 

・参加者は8人グループ×9組=72人で、空席(欠席)一割くらい。

・まず、区からの説明タイム。区長は不参加でビデオメッセージすらなし。けっこう多くの人が(参加する人も)区長と話ができると誤解しておられますが、区長は来ませんよ。「はじまりの会」にすら来なかったのはびっくりしましたけど。
・デザイン会議事務局立ち上げました、と紹介。5人で女性2人。こないだの男ばっかり並んでたのはなんだったのか。
・部長挨拶では3地域で西荻から始められるのが喜ばしいとか言っている。再開発が進められて喜ばしいですか、そうですか、のみならず、8.31高円寺が先だったのが台風延期しただけなのに、と、もう何もかもが適当。

 

・区の説明の最後に、(仮称)について「西荻のまちデザイン会議」としたいが、ここで決定を、と。「いかがでしょうか?異論はありませんね」…?
は?いきなり「異論はありませんね」?何このシャンシャン株主総会みたいなん。
しかし会場は静まり返っているので(いいとも悪いとも言い難い空気)、あ~っ、また総会屋かテロリスト扱いされちゃうけど仕方ない、私の出番だ、と挙手(当然異論ないものとされてるので挙手にも気づかれず)。
「みんなが今初めて聞いた行政案を吟味する時間もなく、異論はありませんね、とは何ごとか。特に考えてきてないから、じゃあそれでいいや、になって行政が出した案が簡単に容認される。ちゃんと検討する時間を取るべき。持ち帰りに」

・この件は各グループの議題となった。他の参加者の方も「考える時間なく決めるのはよくない」と発言したので、ファシリテーターであるデザイン会議事務局:粟野さんが「じゃあ、お二人が言ってるのでこの班は次回に見送りで」と決めようとするから、私が「いや、全員に聞くべきでは?二人が言ったから、って」と即レジスタンス。なんですぐまとめるの(早くまとめて事業を進めたいのがあちこちで見え隠れ)?
結果、みなさんからも「“まち“とは抽象的でイメージしにくい(デザイン会議が抽象的だからこれにした、というのが区の言い分なのに)」「なんでこの名前なのか説明がないと考えられない」など慎重論多し。
ついでに私が「個性ないネーミングですよね」と無駄口。「西荻スクラップ&ビルド再開発道路拡幅沿道デザイン会議」でいいんじゃない?

 

・ここからの全体司会はオフィスケア?篠田氏(女性)。事務所名もはっきり聞こえず、フルネームも言わない、プログラムにも書いてない。どういう事業者か検証できない(元コンサルタントで今は話し合いの運営してると言っていた)。前回と同様、急かしモードの進行。

・各グループのファシリテーターはデザイン会議事務局とその他の区職員で、少し研修受けたそう。しかし年配男性からファシリテーターとはなんだ、横文字使うな!とクレーム。篠田氏は「じゃあ司会でも進行役でもいい、こだわりはない」と、その後は司会の方は~とか言っていた。
いやしかし、ちゃんと「ワークショップ」をやるなら、単なる司会でなく、参加者の発想を促したりするのがファシリテーターなのでは(区職員が、そういう技術を持った人と呼べるかは別)。
こういうことって、当日よくわからないまま、いきなり横文字並べられたら反感買うの当たり前だと思う。参加者にはプログラムや内容(道路事業やまちづくり)についての資料を事前に送るべき何やるかイメージもできずに(それでも西荻のことを何かしたいから、というのは立派だ)道路のことも知らずに来る人多すぎ。それはその人のせいではなく、区がちゃんと説明しないから。

 

・グループ討議は前半がデザイン会議について、後半は西荻の街について。前回やった謎の席替えグループ替えはなし。最後に進行役(ファシリテーター)からまとめを全体共有とのこと。もう前半で帰る気満々(てかもう帰りたい)。

・最初に付箋をいきなり書けと言われる。3分。それを貼りながら各人2分発言せよと。

・私は「3分意見は3分意見の重みしかない」と書いてから「デザイン会議は全くよくない!と思っていて、今日はこれだけ貼りに来た」と、おうちで書いてきた五枚をキッツい口調で読み上げる。とにかく補助132号線で立ち退き、減歩となる受苦者(地権者、テナントも)の意見を全員が傾聴すべき。公聴会を開いて、デザイン会議参加者はその意見を知った上で考えろというのが主張です。

 

・前回の当事者発言を踏まえ、他の参加者の方からは「当事者(地権者)の思いと役所が合致してない。岸本さんは最近“聞くだけ区長“と言われている。まちと道路は関連しているのに、当事者のいる道路のことを避けて、“まち“に逃げている。道路事業できちんとステップ踏んでないまま、デザイン会議を進めようとしている」といった発言が。
他の人からもこの会はまちづくりの話なの?道路なの?と。
これまでもまちづくり懇談会などに参加してきた方からは「道路で賛否があるが、その間に西荻の開発が進むのが心配。(マンションばかりで商店街が衰退しないよう)早めに新築ビルは1階は必ず商店を入れるなど(荻窪はそうらしい)のルール作りを」「杉並区の都市計画マスタープランに基づくまちづくり方針西荻だけまとまっていないので方針の冊子を作るのが目標ではないか」
それに対して、他の参加者からはじゃあそこに反映されるのか?とかあるが、区ははっきり答えず。一体何が反映されるの?この会議で何か決めるの?の疑問が残る。
それと都市計画マスタープランとは?他の地域の方針とは?とか予備知識がないわけで、もしデザイン会議がそうした行政のまとめる「まちづくり方針」のための意見出しであるなら、それらを要約版でも配るべきではないか(当日でなく)。
どうも区は「あまりいろいろ出すと参加者にご負担」などと言い訳しがちだが、それこそ参加者をなめている。資料だって読みたければ読めばいいし、ざっと見るだけでもこういうものがあるんだな、という予備知識を持って当日臨むことができる。
なんか、何をやるのか、何のためなのかを曖昧にして、「わからなくていいんですよ」「知らなくても発言してね」というのは、バカにしてるというか、参加者を無知なままに置いておこうとしてるよう。そうすれば「これは素人考え」と簡単に切れますからね。
私のグループでは、その不安や疑念みたいのがけっこう湧き上がっていて、これは何のため?という、基本的なことが曖昧なまま集められているのだ、それ、おかしくないか?というのが明らかになってきた。
区は曖昧なまま進めたい(急かしたい)のだろうが、いつまでまともな予備知識なしで会議するのだろう?それはデザイン会議(仮称)に本気じゃない、本気でやってるもの、としての重みを持って扱う気がないのではないか?

前回からの不信感が倍増したまま、前半で退出。しかしこの記事に書いたようなことはアンケートで出します。

 

ちなみに「参加者は撮影不可」「SNSも不可」ってなんだよ。批判が広がるのを恐れている?区民がみんなで楽しくまちづくりに参加してま~す、こんなアイディアがでました~!ってキラキラSNSにしてくれたらありがたいんじゃないのか?
(区の他の集会も)取材不可というのもおかしいよね。区民の声か直接世間に流れたらいけないみたい。
もちろん個人情報についてはきちんとグランドルールを作った上で、だけど、それを怠って一律禁止。中学校の校則かよ。

なので、載せました!

今度は目黒川に潜入だ !


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善福寺川上流調節池問題で、すっかり治水事業マニアになってしまい。

2024.7.26東京都建設局の荏原調節池見学会に行ってきました!!

河川愛護月間の事業で、環七調節池もあったんだけど、そっちは落選しました。人気あるんだよね。

しかし荏原調節池、建設局さんがいろいろ説明することよりも、一番驚いたのは、上に団地が建っていること!!

これ、すごいことだよ。

荻窪中学校とか桃井第二小学校の下にこれ作れば、シールドトンネル掘らなくても解決じゃないか?

 

おまけ。動画中でも目黒川は臭い臭いと言ってしまいましたが、がんばってはいるそうです。


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判決編:判決不当!石神井公園裁判

石神井公園駅前にある「ど根性ガエル」のイラスト(練馬区設置の地図)。ど根性ガエルの世界にありえないタワマンをちゃっかり描き込んでいて失礼千万。しかもピアレス?とEmioの差が少ない。

 
2024年7月29日、石神井公園南口再開発事業認可差止め訴訟の判決言い渡しが、東京地裁103法廷で行われました。抽選となったので、整理券を持って並んだのですが、98席よりはちょっと少なかったようで、抽選取りやめ、全員に傍聴券が配られました。
 
NHKのテレビカメラが入っていて、最初に3分だったか、撮影のためじっとしていてくださいと言われた。それじゃ静止画と変わらなくない?
 
そして判決そのものも3分もかからず(文末に判決文コピー全文掲載)。
 
「事業に違法性があるとは認められず、地区内の原告の訴えを却下、地区外を棄却」!!
 
判決不当!
なんかあ然としてしまったのですが、その後、近隣の会場での報告会、さらに8月5日に(問題の)石神井庁舎で行われた報告会にお邪魔して、詳しく解説を聞いたら、想像以上に凄まじい、再開発フリーハンド!みたいな判決でした。
これはまずいよ。こんなの許されたら、石神井公園ばかりか、東京中がムサコになっちゃう!(※後述:練馬区の都市計画審議会で出たワード。どのムサコのことかはご想像にお任せ)。
 
判決当日は「控訴するかはこれから」と、むしろ消極的なムードでしたが(住民側は疲弊するので当たり前)、8月5日の報告会では控訴します!と。
原告の方からは
「3月の仮処分は期待を持たせる内容だったのに、同じ裁判長が地元の意向はほとんど無視していいという趣旨の判決を出した。まちづくりとか地元の住民の声はどうなるのか。このまま判決を受け入れ、黙ってもいられない。控訴という道を決めました!厳しくてもやりたいというのが我々の方針」
「驚愕の理不尽な判決。35mの地区計画を勝手に変えた、景観計画をスルーして、まったく論点が変えられた。
こんな理不尽な判決をこのままにして、黒い疑惑を心に残して生きていくことはできない。何もしないで受忍することはできない。長い間、石神井の街を心配して、巨大な再開発事業に声を上げてくださった皆様方に感謝します」
と、怒りをこめた強い決意が語られました。
 
 
まず、原告でもあり、司会を務めておられたSさんの、今までに至る経緯のお話(8月5日)。
石神井超高層ビルができた、今後この石神井をどうしようか、と10年をかけて住民と行政が話し合い、2012年に地区計画、景観計画が設けられた。駅ビルEmioの高さ(地区計画35mの例外規定で50m)が基準、公園からのスカイラインを整える内容である。
それを練馬区がわずか数年後に新しい計画を持ち出した。住民は行政と話し合い、意見書を出し、公聴会で意見を述べた。これじゃあ仕方ない、司法に訴えようとなり、2020年都市計画決定段階で第1次訴訟。裁判長が替わり、内容的な審議されないで終わった。
そこで再開発組合ができた2022年に組合認可取り消しを求めて第2次裁判。認可は東京都なので東京都が被告。練馬区、再開発組合(後から)が参加人。
この裁判は現在の地区計画の違法性を問うもの。とりわけ以下の2点。高さ制限を撤廃した根拠は?景観計画に抵触している。
裁判は述べ11回、5,6回目は一時間に渡る答弁だった。今年3月には執行停止が出て、期待したのだが…」
 
弁護士さんの解説、質疑応答はこちら。
5月の裁判傍聴ほか、石神井公園についてはこちら。

 

報告会会場の石神井庁舎。5階に区民会議室がある。

 









解説編:判決不当!!石神井裁判

「事業に違法性があるとは認められず、地区内の原告の訴えを却下、地区外を棄却」!!
 
7月29日、衝撃の判決の出た東京地裁石神井公園駅前再開発事業認可差止め・住民訴訟
判決編に引き続き、弁護士さんの解説と、質疑応答です。
判決全文はこちら。
 
判決直後・近隣会場に移動しての報告会と、8月5日石神井庁舎で行われた詳細な説明会の二回分から抜粋してまとめました。尾谷、福田、松本弁護士がわかりやすく解説してくれたのですが、素人まとめなので誤読や抜けがあったらすみません。
正確なところはこちらを。

 

地域コミュニティ | 石神井まちづくり訴訟サポーターズ | 練馬区

 
尾谷弁護士の解説。
 
3月の執行停止から大きく後退。「地区計画はきちんと住民合意を図る手続きがなくてはならない」そういった考え方が踏襲されていない。計画の違法性を認めてもらえるような内容だったが、いろいろあって変節してしまった。
訴えていたことは、第一種市街地再開発事業をやらないで、ということ。
事業をやるには、練馬区都市計画決定をする。その後都市計画決定を踏まえて市街地再開発準備組合が東京都に組合になる申請をする。東京都が組合設立認可処分を出し、準備組合が組合に変わる。第一種市街地再開発は土地の所有権を新しく建てる建物の床に権利変換する。その変換計画を東京都が認可処分、そして工事が具体的に始まる。
今、具体的に工事が施工され、取り壊して整地している状況。
私たちが問題にしているのは都市計画決定で高さ制限が撤廃されたことの違法性だが、組合設立認可についての訴訟なので被告は東京都。計画をしたのは練馬区なので、参加を求めた。結審したあとに組合も参加人として口を出してきた。
 
いろんな議論をしてきたが、何が問題だったか。私たちはほとんどこの二つについてだけ議論していた。
1.建築の高さの最高限度の適用除外を定める手法が合理性を欠く。
2.景観計画の重要性。
 
H18年小田急最高裁判決(複々線化に住民が訴訟)、高裁地裁はこの判断枠組に従って判断する。
都市計画決定の判断過程で「考慮すべき事情を考慮しなかった(考慮すべきでないことを考慮した)」結果「社会通念に照らして著しく妥当性を欠く結論」がもたらされたら違法、ということ。
 
1.地区計画における高さ制限の緩和
裁判所は「練馬区において本件変更前に50m(35m)にしていた理由を考慮する必要はない。土地の高度利用、建物共同化の障害となっているかを検討すればよい」とした。
この判断はまったく理解できない。高さ制限とは高度利用が無制限になるのを止めるためのもの。障害になる、邪魔になるのは当たり前。それを「これまで制限をかけていた趣旨を考慮しなくていい」としている。
変更前地区計画は長い住民参加で作られた。手続き的な配慮と議論が相応にされている。
元の地区計画の50mでの建物をなぜ検討しないのか。50mで事業が成り立つかどうか?練馬区は正面から答えない。練馬区が正面から回答しないことに裁判所も不信感があったはず。まったく回答しないまま判決となった。
裁判所は「大きな必要性が求められない結果、練馬区は考慮すべきであると考えない。準備組合がいくつかの案と収支計画を説明したので相応」としているが、中身はブラックボックスだ。第一種市街地再開発事業では、大きい建物を建てないと採算が合わないので高さ制限を撤廃した。
建築基準法の前身、明治時代の市街地建築物法は高さでコントロールして、31m制限(丸ノ内のビルに適用)。建築基準法容積率になり、平成10年代になって容積率に加えて高さ制限し、周りとの調和を図ろうとした。
高さ制限は調和のためにわざわざやるもの。
こんな判断されたら第一種市街地再開発をやるときは建物の高さ制限を外して自由にやってよくなる。
 
2.景観計画の重要性
景観計画との整合性もトリッキーな解釈。
プラウドとピアレス(タワマン)が駅近くにあり、建った時に議論があり、景観計画が立てられた。石神井公園から見て突出しないこと。ピアレス、プラウドのような高い建物をもう作らないという意志が示されたのが景観計画であり、地区計画できちんと高さ制限を制度化した。区は説明会で「二度と高い建物はできません」と言っていた。
これに対して裁判所は「突出したものを制限する趣旨ではあるが、二度と出さない、とまでは言っていない。都市計画マスタープランが変わり、石神井公園の駅前高度利用する、市街地再開発を重点支援事業としている。地区計画・景観計画の読み方が変わる
マスタープランは上位計画ではあるが、景観計画を変えなくても読み方が変わる?プラウドやピアレスがある前提でそれより突出しなければいい?だから景観計画の整合性は問題ない?
こんなトリッキーなのは初めて見た。
 
3月の執行停止決定のときは全然違うことを言っていた。
「地区計画は都市計画の中でも狭い範囲について定める。住民合意が必要」だと。感動しました、裁判所がようやくここにたどり着いたか。本来的には全員合意が望ましいという国会答弁も出ている。
 
判決棄却となったが、正直理解しがたい。これまでの高さ制限まったく考えないでいい、景観計画で制限してもマスタープラン変わって骨抜きにしていい。こんな判決されたら再開発やりたい放題。合意形成なんか不要ということになる。
この判決は一律適応される。都市のあり方を決めるときに住民合意を無視していい。これを許したら大きな禍根を残す。
 

石神井庁舎から見たプラウド(野村不動産)。

駅ビルのEmio。これでもニシオギにとっては超高層タワマン。

質疑では、裁判所が判断をなぜ変節させたのか?に、まず疑問の声が上がりました。
Q:品田裁判長は真摯に聞いていると信じていた。私たちの主張を理解し、練馬区にきちんと返事し3月からの変節にはなんらかの忖度があったのか?
A:憲法上裁判官は自己の良心で判断、圧力で変えてはいけない。直接の圧力とは考えられない。
3月の地裁の執行停止決定を、私たちの直接の声を聞いたこともない高裁が覆したのは変節の動機にはなるのでは。その時点ですでにドラフトを書いていたはずの左右陪席が、高裁が覆したタイミングで異動したため、結審のあと2カ月半くらいかけて書き直した。3月の時点では執行停止に沿う判決のはずだった。
それがいつも通りのよくわからない保守的な判断に変わった。
地裁が勇気を持って執行停止を出しても、高裁に判断がひっくり返される。その結果工事が進み、事情判決(違法でも無効と判断しない)。
地裁の判断を覆したのが高裁だから、控訴してもちゃんとした判断がされるかわからない。これまでも属人的な考え方に振り回された。
しかし、地裁の判断をこのまま追認することは影響が大きい。最終的に控訴して高裁の判断を仰ぐ。
 
Q:裁判とはこれこれこういう理由で棄却、とは、ならないのか?いきなり棄却するだけか。発端が住民に説明がない、地区計画は住民全員に納得してもらうものというのを役所が破っている、裁判長がひと言も触れない。
A:理由の説明があってしかるべき。大切な視点。口頭弁論を公開でやるのは、権力の行使をみなが監視できる趣旨。結論だけ言うやり方は、公開の法廷でやるべきか、裁判所も見直してほしい。
今回の裁判長は3月までは真摯に耳を傾け、それに沿っていた。一番議論していたことを「考慮要素ではない」で切ったのはなぜか。納得しかねる。
 
Q:大義とか正義はわかる。勝つための戦略は具体的にはどうやって?
A:これからロジックを話し合う。一般論としては法律論だけで勝つ控訴審はない。事実が重要。マスタープランを変えた経緯、景観計画を作ったとき、ひとつひとつの議論を改めて見直す。裁判所が判断したのがこれでいいのか、当時の議論から掘り起こす。事実を緻密に確認して主張を組み立てる。
Q:当時の議論、区の公聴会では反対多数だったのに、練馬区は「いい感じ」だったとまとめた。公聴会や都市計画審議会の議事録は使えるか?
A:基本的には手に入る。「自由な議論が阻害される」として議事録が書かれていない場合は、どうするか。
Q:区と住民の合意形成うまく行っていないと思うので、そこをついてほしい。
 
Q:練馬区立美術館・貫井図書館(複合施設)建て替え問題に取り組んでいる。費用が70億と言っていたのが100億に。さらに美術館・図書館だけでなく、事業が中村橋周辺の「まちづくり」になって街のあり方を大きく変えるものになった。小池都知事東京大改造に沿って練馬区はやっていきたいのでは。中央区や渋谷区みたいなまちづくりに追いやられる。
尾谷:前川区長は元・東京都庁の都市計画局、築地移転の担当。小池都知事と一定のつながりはあるだろう。
 
Q:再開発における公共性を問うているのか。マスタープラン以外が御破算にされる。この判決は、行政がやることは絶対というお墨付きになっているのか。
A:決して行政が絶対とは言っていない。広範な裁量はあるが、考慮すべきことをしないのは違法になる、という考え方。
マスタープランが変わって景観計画の読み方が変わる、都市計画が上で景観計画が下、上位計画が変わって読み方を変えていいなどというのは初めて見た。景観計画の経緯、趣旨などは改めて問い直さねばならない。
地区計画というローカルな仕組み、住民参加の上で高さ制限を決めた。それを覆すのに上位のマスタープランで重点事業として位置づければいい、ということになる。パブリックコメントはやっているが、そのような密度の参加に基づいて政治的な意向が反映される文書。それと住民が作りあげたものとどちらが大切なのか。裁判所はマスタープランに書けば変更していい、とした。都市計画のあり方に関する深刻な問題。事業者はうるさい住民を相手にしなくても、区のトップを動かせばいい。地域住民による取り組みを踏みにじる判決だと感じる。
 
マスタープラン改定、行政のあり方については、両日とも参加していた池尻成二区議が詳しく語ってくれました。
 
強い憤りを感じる。
マスタープランの改定は志村前区長が亡くなる直前に素案が出て、前川区長が再開発を公約にして大幅に書き換えた。素案が2014年にできて、石神井公園再開発は入ってなかった。2015年の原案で再開発が入ってきたが「市街地再開発の事業を使って」とあるだけ、高さ制限のことは書いてない。素案と変わったのに公告縦覧しかやっていない。説明会もやってない。
そんなマスタープランでなにもかもOKとは恐ろしい。マスタープランとは抽象的、一般的なもので、地区計画こそが個別の地域を反映したもの。まちづくりの民主主義が消えてしまう。
練馬区内にはたくさん地区計画があるが、住民参加、住民合意があったのは石神井公園練馬駅だけ。景観計画に反映されている。それ以外は道路にくっつけたものだ。それが必要あればいくらでも変えられるというのは住民合意が否定された。
今回の地区計画で、住民参加したまちづくり懇談会は合計7回。市街地再開発の説明があったのは7回目が初めてで、「駅前の顔作り」とだけで、高さ制限の話は出なかった。懇談会が終わって初めて100mの話が出てきた。
都市計画審議会で部会長が「採算性で100m作っていいといっていたら石神井公園が武蔵小杉になってしまう」と言っている。
まちづくり、自治の流れが大きく転換させられる。
 
5月の裁判についての記事はこちら。

潜入!! 和田ポンプ施設


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善福寺川を全部歩く! の番外編です。

2024年6月8日 東京都下水道局「和田弥生幹線・和田ポンプ施設見学会」に行ってきました。周辺の「合流下水改善施設」についても調べました。カラッキィーの解説つき!!

 

地下50mに潜入!

善福寺川神田川に流れ込む合流下水管から増水時に水を逃がす巨大トンネルが、杉並区和田から中野区弥生町の本郷通りの真下に。

外環道でおなじみシールドマシン。東京の地下は穴だらけ?

 

まだまだ穴を掘るよ!!(暗渠化した桃園川の増水対策として、天沼弁天池~蚕糸の森公園~中野本町の神田川合流点付近まで2394mのシールドトンネル)。


おまけ。

合流下水放出の様子(増水した川に近づいてはいけません)。

西荻北5丁目・原橋。


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練馬区、石神井公園景観条例を棄てるのか?

西荻窪補助132号線をどんどん北に向かう。そこが、石神井公園(駅)。ここでも凶暴な再開発の嵐が。
西武池袋線石神井公園駅は、北口は電車高架に伴い、典型的な再開発の駅前となっていて、大きなロータリー、公共施設と商業施設が入り、上にはタワマン、という状態です。

 
南口はこぢんまりとした商店街、そこから石神井公園に下っていく住宅地、古くからある街並みがそのままになっています。

 

今、問題となっているのは、南口駅前に建設される、北側の26階建て100mの高層再開発ビル(組合施工:野村不動産練馬区など)と、広い道路(補助232号線拡幅延伸)を挟んだ南側の低層(35m予定)棟。
 

石神井公園からの眺め。
すでに2本のタワマンが建っているのは、北口駅前ピアレス・ザ・タワー:住友不動産、33階と南口富士街道沿いのプラウドタワー:野村不動産、25階建て
(黒いスワンボートがいた)
この問題には二つの側面があって、まず、石神井公園周辺の景観の問題。駅前だけでなく、練馬区の貴重な自然である石神井公園からの景観を保全(2011年・練馬区景観計画)する観点で、2012年に地区計画が定められ、35mの高さ制限(※例外で50m)がかけられていました。その条件が石神井公園からのスカイラインでした。
(※公開空地を設けるなどで「ボーナス」で規制緩和される)
それをわずか8年後の2020年(当然この再開発事業ありきで)に規制緩和して、2000㎡以上の敷地の再開発なら高さ制限なし!にしたのです。
 
もう一つは、公共が率先して民間の再開発事業を推進していること。富士街道沿いの練馬区役所石神井庁舎(等)が移転して、3~5Fを30億円(現在の予定。当然膨張する)で購入。それで再開発に税金投入。
よくもまぁ、どこもかしこも同じ手口で街こわしを進めるものです。
 

これが現在の当該地。駅を出てすぐです。ららマートとかあったとこ。商店街の入り口がこの状態(工事期間中ずっと壁)なのは、再開発ビル以前によろしくないです。
そして再開発に抵抗しているのが、この医療ビルです。

[裁判について]
地権者と、周辺住民の「サポーター」の方が、事業差し止めの行政訴訟を起こしています。
2021年3月に始まった第一次訴訟は、その年の11月に却下。しかしそれは「都市計画決定段階での訴訟が早すぎる」ためで、翌年に練馬区・東京都を含む再開発組合設立の段階で被告を変えての第二次訴訟。
 
しかし、その間も見てのとおり事業は進み、今年2月には「明け渡し請求(要は立ち退き)」が出されます。
裁判中でも事業は停止できない原則ですが、東京地裁は3月13日に「土地明け渡しで生活環境や地域社会との密接なつながりを失う損害は、回復が容易とはいえない」として、明け渡し請求の5カ月停止を決定!快挙!
しかし、組合側が即時抗告し、5月9日に東京高裁は「再開発で建設される高層ビルの区画を地権者が取得予定で、建設工事中も仮の住居を確保することは難しくない」「明け渡し請求の停止が必要なほど、重大な損害は認められない」と、決定取り消し
 
[傍聴してきた]
そして2024.5.16東京地裁103法廷で行われた第11回口頭弁論を傍聴してきました。
地裁で一番大きい97席が満席で、ほとんどが市民側でしたが、相変わらず区や組合は黒スーツでSDGsバッヂ(再開発や樹木伐採する人が付けがち)ですぐわかる、それが1-2割くらい?
本来、2.8の口頭弁論が最終で今回は結審のはずでしたが、突然、これまで訴訟に参加していなかった(都と区が弁論していた)再開発組合が弁論を希望し、判決言い渡しが延期になりました(それが目的)
 
再開発組合弁護士の答弁は「たっての希望で声を聞いていただけることになった」と始まり、組合の顧問弁護士となり、現地に行ったら、駅前が歩道車道なく危険だった(ベビーカーのお母さんを持ち出すの、道路拡げたい側が、よく利用する手口)。再開発組合はこれをきちんと整備するにあたり「街路事業」にすると「土地収用」となり、現在の事業者が戻って来られない。戻って来られるよう「市街地再開発事業」にした(※)。
組合は立ち退く方々に「配慮」して、強制力がある中みなさんにご協力いただけるよう「配慮」している。それなのに「原告の主張には名誉毀損がある」というものでした。
(※これは前記事羽村のときも同じで、土地収用:買い取りでなく、権利交換や換地で再開発地区に入ればいいというもの。その間の仮設移転の負担や、権利床と現状の差異などがあるが…)
 
これに対して原告弁護士は、最初の裁判官とのやり取りで被告の答弁を先にするよう要求し、有利な後攻での答弁。うまい!再開発組合の論点のおかしさ、今なぜ出てきて答弁するのか、を、ビシッと追及。これは後攻じゃないとできない。
以下、ざっくりとメモした論旨。
「話のすり替えである。
なぜ再開発が必要なのか、再開発によってこれまでの[地区計画]が変更されている。「130mだったものを“配慮して“103m、99mにした」と言うが、この変更によって区画の中では今後誰でも高さ制限を緩和したビルが建てられるようになる。それが住民参加の景観計画を変えることになる。
再開発事業者は控訴があると知りながら、1月に「権利変換」を行い建物の解体をどんどん進めていて、今年12月解体終了のスケジュールを改めない。
施行停止の判決は5月9日高裁に取り消されてしまった。「原告は肉体的・精神的に相応の負担があるが、再開発ビルに入れるので利益になる」とされた。
(これまで都と区に任せて訴訟に参加しなかった再開発組合が要求した)弁論再開によって判決言い渡しを遅らせることで、今も建物の解体・インフラの撤去が続いている
私たちはできるだけ早期に[地区計画]の違法性を確定したい」
 
次回期日:判決言い渡し:7/29(月)15:00 東京地裁103法廷。
 

(執行停止の取り消しで、解体は暴力的に進んでいる)
 
[裁判の解説]
私は参加できなかったのですが、一緒に傍聴した阿佐ヶ谷の仲間が、事後の弁護士解説会に参加して、そこでの内容を教えてくれました。
 
石神井公園駅南口再開発事件:弁護士解説
 
1.前定
・原告(地域住民の皆さん)
・被告 東京都
 補助参加*1 練馬区
 補助参加*2 再開発組合(2024/3/29参加申立)
 
・請求の内容 再開発組合の設立を認めた都の認可は無効
・提訴年月日 2022年8月1日
 
2.再開発組合(以下、組合)はどうして補助参加をして「引き延ばし」を図ったのか。
 
1)2022提訴以来、組合の弁護士は傍聴し、訴訟の流れを知り、2月結審までにいくらでも補助参加の機会はあったが、今年3月13日の本訴における執行停止決定によって、「行政訴訟で住民側が勝つ訳がない。東京都と練馬区に任せておけば大丈夫」という見通しが危うくなり、「都が負けるかもしれない(その結果、組合の設立認可は無効)」と考えたから。
←その位今回の「執行停止決定」はまれな事(前代未聞?)であった。
 
2)組合は、1月に「権利変換」、2月9日に「土地・建物の明け渡し処分」をして、解体を急ピッチに進め、ガス・電気・水道などのインフラも撤去している(現状は8割方解体が済んでいる)。
 
3)組合側の補助参加、口頭弁論に向けた準備書面の要点
①当初の130m計画を99mに下げた。
練馬区の景観計画や景観形成基準を遵守する内容に変更した。
石神井公園駅開発の北口と南口の一体性を考慮←練馬区も主張した事が無く今回初めて出された。もし、当初からその考え方があったのなら、区が南口35m制限を覆すことも無かった。
 
3.解体が進みくだんの土地が更地になった場合に事情判決の対象になるのか。
1)尾谷弁護士の解説では、平成16(2004)年改正後、行政訴訟で住民が勝ち、しかしながら「事情判決」で棄却された事例を知らない。どういう場合がそれにあたるのか不明である。
 
2)会場に池尻練馬区議がいらして、「跡地にタワマンが建った後なら、” 処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しない場合に”なるかもしれないが、更地になった位では当たらないのではないか。」と言われていました。
 
3)尾谷弁護士は結審した2月までにも、今回の口頭弁論でも「こんなに解体が進んでしまった今では、組合認可が無効となり原状回復は困難」などの主張は全く出されておらず、少なくとも1審で「事情判決」の余地は無いのではないか、という事であった。
 
※違法判決が出ても、事業取り消しが「公共の福祉に適合しない」場合、棄却される。つまり、不可逆的に事業が進んでいて、止めると莫大なお金(行政だから税金)の損失がある。でも、それ、やったもん勝ちになって、裁判中にどんどん進めれば棄却に持ち込めるってこと?
 
4.執行停止と取消
「執行停止の取り消し」は東京高裁が、5/9に行った。理由は、執行停止の根拠(行政訴訟法第25条2項)「重大な損害を避けるための必要性」を欠くため。

 

・精神的な苦痛は認めるが、
・いずれ再開発ビルに戻れるし、
・新しい場所で営業できる
 
これに対し、弁護士たちは、即日(5/9)最高裁へ「特別抗告」し、高裁へ「許可抗告」をした。 
 
[追加 :移転予定の石神井庁舎の現状 ]