練馬区の吉田新区長が公約通り、練馬区美術館・貫井図書館、隣接するサンライフ練馬の建て替えを白紙にし、「再整備」方針の検討 に入りました。おそらく、改修は必要となってくるものと思いますが、いったん「最後の展覧会」をやってしまい、これまで宙ぶらりんになっていた美術館が全面再開 しました。おめでとう ! 見に行ってきました。
練馬区立美術館コレクション 若林奮-Run and Rest-|寺田真由美-不在の存在- | 展覧会 | 練馬区立美術館
2026年7月25日から若林奮「Run and Rest」寺田真由美「不在の存在」 の二つの展覧会が、ずっと閉まっていた第一第二展示室それぞれで開催されています。10月18日まで。これは二人とも(若林氏は故人)美術館に新寄贈した作品のお披露目展で、美術館は閉まっていても、アーティストから信頼されて収蔵・研究活動に励んでいるものなのだな、と思いました。それをお披露目できるというのは、再開の喜びの表現にも見えます。
サンライフ練馬
アーツ中村橋 2026―わたしとまちの記憶 | 展覧会 | 練馬区立美術館
同時(9月12日から11月8日)に、中村橋の街やサンライフ練馬も使った「アーツ中村橋2026」 という企画が行われています。これは去年から始まった企画で、要するに去年は美術館が閉まっていたから、そこでなんとかやろうという感じだったのでは、と思ってしまいますが、でもこういう街でやる展覧会は楽しいですよね。無料です。
杉並区でも11月3日から11月23日は野外&まちなかアート展「トロールの森2026」 が行われますよ ! 私も出展します。
nishiogidrunker.hateblo.jp
以上は宣伝でした。
しかし、アーツ中村橋、今年は美術館も使えるのがやはりよいことです。大小島真木さんの大型作品がロビーを覆いつくし、袴田京太郎さんが第三展示室を使い、飯田竜太さんの繊細な作品がちょっと見逃しそうな場所に置かれています(昔ロビーでカフェをしていたので、そのための小窓にあります)。
袴田さんのは個展といってもいいくらいたくさんの作品が、「戦時下の彫刻(芸術家が国家に奉仕していた)を、今、戦争で不足している発泡スチロールで再現する」という大型彫刻を中心に、がっちり構成されています。美術館の前にも野仏がいます。
さて、ここからが本題です。
練馬区美術館・貫井図書館は建築家・平田章久 氏の設計で建て替えを予定していました。が、工費高騰により、予算が急増。それもあって止まっていたのです。
しかし、それだけではなく、これで大丈夫なの?というようなデザインで、区民や専門家からの批判がありました。美術館では展覧会で設計案も出品されていて、私も見にいったのですが、けっこう頭を抱えるような感じでしたね。
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批判のひとつに「太田市美術館図書館」とそっくり だ、街の顔だ、個性(練馬区は富士塚で、太田市は前方後円墳)だと言っているのに、これじゃあ太田市のコピペ ! というものがありました。平田展に太田市のも出ていたのですが、私は「あ、これが練馬区のか!」と最初思ったくらい似ている。
そして、他の批判にある構造上の問題の多くも、すでに太田市で実際に起きていることだ、と。
で。2026年8月、行ってきました。群馬県太田市。
駅前の好立地だが
問題の太田市美術館・図書館は太田駅北口の目の前にあります(館内の撮影は受け付けで申請が必要)。
www.artmuseumlibraryota.jp
なお、南口の駅前は南に向かって広い大通りがずっと伸びており、最初はホテルとかなのですが、その先は大通り沿いにぎっしりと風俗店(キャバクラとかフィリピンパブだけでなくて、もっとガチなものも)がギラギラに立ち並ぶというすごい景観です。かつての西川口よりもすごい。貸自転車(駅の観光案内所で200円/1日。坂が少ないのでお勧めです)で通ったのですが、帰りに道を間違えて写真が撮れなかったのが残念です。興味のある方はストリートビューなどでどうぞ。
いきなり問題点ですが、開館時間。10:00~20:00(美術館は18:00)まで、となっていますが、「図書コーナーは18:00まで」 なのです。図書館なのに「図書コーナー」というのもどうかと思いますが、じゃあどこが20:00までなのか、というと、1Fのカフェとロビー的な雑誌閲覧(ブラウジングコーナー)だけ。
駅の真ん前に図書館があれば、通勤・通学時にどんどん利用できるじゃないですか。杉並区は9:00~20:00(一部は21:00)、新宿のほとんどの図書館なんて9:00~21:45ですよ。せっかくでかい図書館を作っても、市民が本に親しむ機会を増やしているとはいいがたいのでは。
そして、その結果、2Fにつながるスロープから始まる本棚には、係員がこうしてロープを張りにきます。毎日それをやるのも面倒ではないかと。
こうした「貼り紙と仕切りだらけ」の運用があちこちにみられます。それは明らかに動線の設計が悪い。
シームレスなつくりのはずが
私は16:00ごろに到着し、まず美術館の企画展(常設はない)を観覧。展覧会は1Fから始まります。
1Fには2室あって、それを出ると2Fへはスロープで上がります。
展覧会は3人の作家がそれぞれ1部屋ずつ使う構成だったのですが、なんか、展覧会の途中にこういうところに出るのもちょっと興ざめ。
このテープの反対側には、こんな張り紙。文具クリップで止めるのもけっこうデザイン台無し感があります。が、デザインそのものに問題があるので、こういうことをしないといけなくなる。
これを1Fの外側から見ると、こうなっています。「創造の道」なのに、それが閉ざされている 。
有料エリア(展覧会)と無料エリアの仕切り方 は、けっこう悩ましいものがあると思いますが、設計段階でちゃんとそれを悩んだのでしょうか。できあがってからの運用任せになっているようにみえます。
2Fと3Fのリンクもこうなっています。
平田章久氏ご自慢の「からまりしろ」のテラスもこのありさまです。この日は雨のためクローズでした。使える日が少ないのでは。
3Fのトイレです。「開閉注意」 の貼り紙があります。そりゃあこんなの、ドアだと気づきにくいですよ。貼り紙がないと通路が続いているように見えるかもしれない。まるでリミナルスペース。それってホラー?壁と段差がないのもまぎらわしいです。ちなみに、ドアがとても重い。子どもとか高齢者は大丈夫か。
展覧会はホワイトキューブでできるのだが
展覧会そのものは、とてもよかった です。すげえよかった。学芸員さん、作家さん、美術館スタッフさん、ありがとう!
ディスりたいのは建物の設計であって、美術館の内容ではありません。むしろ小さい(けっこう狭い。受け付けで「どのくらいのボリュームですか?」と失礼なことを聞きましたが、「点数はそんなに多くないです」は、参考になりました。展覧会って、観覧ペースが大事)ながらも優れた企画をしていて、学芸員さんとかは(建築による制限の中で)がんばっているし、センスもあるのだと思われます。そういう人たちが「使いにくそう」なのがかわいそう。
www.artmuseumlibraryota.jp
この時にやっていたのはこちら。「本と美術の展覧会 vol.6」 という継続的に、この美術館ならではの本との関連を打ち出した展覧会です。でも図書館は18:00に閉まる。
1室目には折笠良さんの映像と、そのために作った「文字、言葉が崩壊していく街」のオブジェ。映像がとても怖くておもしろくて見入っていましたが、その間、他のお客さんは来なかった…。平日とはいえ、夏休み中ですが。
2室目は大城夏紀さん。万葉集とサッフォーをモチーフにしたプロジェクションマッピングです。
やはり誰も入ってこないので(ほんともったいない)、こういうことをして遊んでいたら、あまりに長くいるので「出口がわからないのでは」 と心配した、前の部屋の看視員さんが様子を見にきてくれました(この部屋は無人)。
出口は左の階段の上です。わからなかったわけではないのですが。バリアフリーではないですね。階段の上にはドアがあって、自分で開けて、さっきの「創造の道」に出ます。こんな奇っ怪な美術展の動線は初めて見ました(今はいろんなとこ(アーツ中村橋とか)で美術を展示するので、スムーズな動線はマストではないが。私も某瀬戸内の芸術祭で「迷う人たち」のためのボラをしましたが、そういう「ヒューマンな」案内は、むしろアートには必要。しかしそれは瀬戸内海の田舎の島の話。ちゃんと作った駅前美術館ではない)。
私は、前日にアーツ前橋という商業施設をリノベーションした美術館に行きましたが(ここの展覧会もよかった)、複数の部屋をスムーズにつないでいましたよ。意外と広くて、後半時間足りなかった!
太田市美術館の、大城さんの作品は「創造の道」にも展開しています。これはガラス窓で直射日光。作品の素材が頑丈でないと展示できないですね。
2Fは松元悠さん。法廷画家でもある松元さんは、自分が傍聴した裁判のイメージをふくらませてシュールな光景を構成します。今回はマンガもあって、壁の版画と対になっています。たとえば、右の「いつものタワマン」は、自分がいつも乗っている電車から見えるタワマンで殺人が起こったが、そこは昔は池でスッポンがいた、ことから。ちょっと以前、の事件と現代と過去をつなぐアート!地面の記憶!死とか事件を媒介として、土地の記憶を「今」に叩き込む、「罪と罰」!
とても見ごたえがありましたが、この美術は、どこであってもホワイトキューブがあればできる展示ですよね(巡回してほしい)。結局、美術展というのは企画と作品が命 なのであって、めんどくさい動線とかはむしろ妨げになると思います。
屋外作品が建物や池とコラボしている(豊田市美術館、国立近代美術館など)とか、建物に組み込まれた常設作品(青森県立美術館、金沢21世紀美術館)、美術館自体が建築と一体(豊島美術館など)とかなら、建築と作品の関係性はわかるのですが。そういえば、ここは屋外にも屋内にもシンボルとなるようなパブリックアートがありません。建築だけに全振りした感じ。
でも、この部屋でやっと他のお客さんがいた。よかった。
いよいよ図書館です。
3Fで展覧会は終わった(展示室3は大城さんのセルフワークショップ。誰もいなくて、用意された木型で勝手に拓本みたいなことをする)ので、上から見ていきます。
図書館機能はレファレンス・ルーム。ゆったりしたテーブルと豪華なオフィスチェアみたいのが配されていました。利用者は1人。
2Fの目玉はアートブックコーナーです。今回の展覧会の関連書籍なども並べてあります。しかし。
暗い!!
さらに暗い。室電が暗いから、本棚に照明をつけていますが、それって一日中(10:00-18:00)さらされてたら、本が傷むのでは。あと、棚の足が奥が上がっているのがわかりますよね。これは床が斜めになっている からです。本を落ち着いて見られる環境を作ろうとしていないと思います。
図書館員さんが返却本を戻すとき、ワゴンで持ってきますが、斜面だといちいちロックかけないといけないかも。美術本は重いし。
その暗さを補うように、突然ネオン(LED管)です。
えほんコーナーはくつをぬいであがります。
しかし、誰もいないので、この子ども靴はダミーです。いろいろ運用に苦心しているのがうかがえます。
この図書館は椅子が自慢で、これは地元企業が特注で作った亀チェア。それはいいのですが、上写真の透明椅子。こじゃれたスポットによくある椅子ですが、座り心地のいいものではありません。キッズサイズもありますが、安全性はどうなのかな。落ちるぶつかるリスクは。
各所にある椅子が全部違う、そのことをフリーペーパーの漫画にしていました(そういう図書館員さんの努力はすばらしい)。その中でもバーカウンターみたいな椅子が「どうやって上げ下げするのかわからない」というネタがあり、なぜそうやっていちいち解説しないといけないアイテムが多いのだろう。
ところで、キッズコーナーなのに本棚が6段って、高いと思いませんか?
153cm、発達のいい小学校6年生よりは小さい大人の私が、背伸びせずに手をフルに伸ばして、これです。
さぁ、いよいよ太田市図書館、そして今大ブームの映え図書館でおなじみ、アレをディスりますよ。
高層本棚徹底検証
2Fから1Fのスロープです。左上のが「バーカウンター」です。
13段プラス1~2段ありますが、本が入っているのは下の方 だけ。上には面陳がしてあります。中野東図書館だと、ここはモック(ニセの背表紙の空箱)や適当な写真パネルでしたが、本当の本です。書名はどこからも見えません。かなり灼けています。そしてたかが1冊であっても、落下したら危険です。
灼けるのは当たり前です。この全面ガラス窓 。一応カーテンを吊っていますが、設計では「外から本棚が見える」がウリでした。電車(左端)からも見えますね。ちなみに、青と黄色の丸いのは椅子です。
そして、手前に階段状の箱があります。
「高いところの本が読みたいあなた」はみどり(カーペット)のところを踏み台にして取ります…取れません 。
まず、題名が下からは見えない ので、何を取りたいのかも決められません。そういえば、著者名とか分野とかの表示がとても少なく(本棚に差してあっても下からは見えませんが)、どこにどういう本があるのかわかりにくいです。これは運用が悪い。時間がなくて(18:00閉館)、蔵書の内容は確認できませんでしたが、古めの本が多かったように思います。
踏み台の上はこんな感じです(オレンジのが私のサンダル)。かなり狭いです。足は23cm、発達のよい小学生より細い私で、こんな感じ。
ふつうの踏み台もありましたが…取れません。まだまだ上には上 があり、あと3段。 「~~の街づくり戦略」、~~はたぶん赤字だったのでしょうか、色が完全に抜けています。あんまり新しい本でもなさそう。
図書館員の方がいたので、「どうやって取るんですか」と聞きました。「言ってくれればハシゴを持ってきて我々が取ります 」「いちいち大変じゃないですか…」「ははは…」。しかも「言ってくれ」ようにも、書名が見えないのですよ。
本が灼けますよね、というのにも、困ってます、とのことでした。あたりまえだ。
高層本棚は本を「手に取って読むもの」ではなく、映える背景 としてしか見ない、非常に失礼な発想です。この「手が届かない」姿からは、「人と本を遠ざけている」とみえないでしょうか?
本好きな人なら絶対にやらないことです。本が好きすぎて自宅で積みすぎて高層化している人はいますが。それも積みすぎると読まなくなりますよね(いや、いつか必ず読むもん !)。
18:00以降の図書館
ブラウジングコーナー。ブラウザって。この椅子はものすごく沈む。
物販はスバルグッズ多数。スバル羊羹もあります。ここと隣の大泉町(ブラジル人が多い)はスバルの企業城下町。昔は中島飛行機でした。あとは埴輪。
いい立地で、美術館の企画もいいし、本は…まぁ、蔵書数は多いみたいだし、もったいないことです。このテラスの広さ、そしてそれなのに雨に濡れている屋外テーブル。
練馬区はこうならなくてよかったですね !!
この美術館・図書館は清水聖義前市長の「マイレガシー」案件だったそうですが、3Fで「対話の市政」を揚げる穂積昌信新市長のPR動画が延々ループ していました。清水市長の動画だったのを差し替えたのかもしれませんが、これもどうなの、と思いました。
おまけ: 早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)
腐る(カビる)建築、クマ被害 、こと隈研吾設計の早稲田大学国際文学館です。竹です。まだカビだけですが、割れてササクレますよね。まぁ、これ、要る?って感じの貼り付けオブジェなので、壊れたら取ればいいか。
中をチラっとみたら、案の定高層本棚 でした。